■フバータル「線形計画法」(その8)

 巡回セールスマン多面体は完全グラフKnに対応している.この多面体は(n−1)!/2個の頂点をもつnC2−n=n(n−3)/2次元の多面体である.

 ところで,n次元正単体は(n+1)個の点からなる完全グラフとみなすことができ,k次元胞の数はfk=(n+1,k+1)である.完全グラフKnは正n角形にすべての対角線を引くことと同じであって,n個の点からなり,k次元胞の数はfk=(n,k+1)である.

 したがって,巡回セールスマン多面体はn−1次元単体とは明らかに異なるものである.

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【雑感】正五角形に対角線を描き入れると星形五角形(ソロモンの星)ができるが,正五角形と星形五角形の入れ子はペンタグラムと呼ばれる.

 この図はK5と呼ばれる完全グラフである.グラフ理論を知っている人にとって,K5とK3,3を含むグラフはどうやっても平面グラフにはならない(クラトウスキーの定理)ことは常識的なことである.

 グラフ理論を知っているひとならば,完全グラフK5と答えるかもしれない.しかし,それでもイメージは貧困である.幾何学者にとっては,この図形は4次元正単体の投影図そのものなのである.もっといえば,n次元正単体は(n+1)個の点からなる完全グラフKn+1とみなすことができるのである.

 もし,この図が5つの四面体の結合にみえたなら,あなたも立派な幾何学者である.そこで格言,「この五角形が4次元正単体に見えぬ者は高次元幾何学の門をくぐるなかれ」

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