■いろいろな不等式(その38)
ロボット工学の分野においてはロボットアームの設計や制御,障害物回避問題などが一つの重要な研究対象になっているのだが,障害物回避動作を最適に制御するためには図形のミンコフスキー和をコントロールしなければならない.
ミンコフスキー和A+Bは図形Aを構成する点の位置ベクトルと図形Bを構成する点の位置ベクトルの和全体がなす図形であり,一方の図形の原点がもう一方の図形の境界上を一周するように平行移動させたときにできる和集合である.(いろいろな使い道があるものだと感心したのだが)ロボットの原点が踏み込んではならない領域を表すのに応用することができる.
日本の国土をA,半径rの円板をBとして,陸地の各点にこの円板を貼り付けることによって定まる領域がA+Bである.すなわち,陸地からの距離がr以下の海の部分を陸地に加えた領域がミンコフスキー和A+Bである.今回のコラムでは,A,B,A+Bの3つの面積の関係を述べたブルン・ミンコフスキーの不等式を紹介する.
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【1】ブルン・ミンコフスキーの不等式
冒頭では平面での場合を述べたが,一般のn次元図形に対しても不等式
|A+B|^1/n≧|A|^1/n+|B|^1/n
が成立する(平面図形の場合はn=2).等号成立はAとBは相似の位置にあるか,またはAはBの平行移動であるときである.
1887年にブルンがn=3の場合を示した。世紀の変わり目にミンコフスキーがすべてのnに対して示した。凸タイの幾何学の根幹をなしている
また,2つの凸図形K0,K1が与えられたとき,K0からK1への連続変形
Kt=(1−t)K0+tK1 (0≦t≦1)
においては
|Kt|^1/n≧(1−t)|K0|^1/n+t|K1|^1/n
が成り立つ.
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