■アぺリの微分方程式(その10)

【2】ゼータと2項係数

 アペリの証明の核心は,漸化式

  (n+1)^3un+1=(34n^3+51n^2+27n+5)un-n^3un-1

を満たす数列{an}を構成したことですが,そこにはゼータ関数に帰着する無限級数(n=1~∞)

  5/2Σ(-1)^(n-1)/n^3(2n,n)=ζ(3)

が現れます.

 同様に,

  Σ1/(2n,n)={2π√3+9}/27

  Σ1/n(2n,n)=π√3/9

  3Σ1/n^2(2n,n)=ζ(2)

  12Σ(2-√3)^n/n^2(2n,n)=ζ(2)

  5/2Σ(-1)^(n-1)/n^3(2n,n)=ζ(3)

などが知られています.

 さらに,後述するポールテンの問題

  36/17Σ1/n^4(2n,n)=ζ(4)=π^4/90

より,ζ(2),ζ(3),ζ(4),・・・がΣ1/n^k(2n,n)あるいはΣ(-1)^(n-1)/n^k(2n,n)の簡単な有理数倍になっていると予想するのは当然の成りゆきでしょう.

  ζ(k)=R*Σ1/n^k(2n,n),ζ(k)=R*Σ(-1)^(n-1)/n^k(2n,n)

 このことから,

  ζ(5)=R*Σ(-1)^(n-1)/n^5(2n,n)

と予想されますが,

  ζ(5)=5/2*Σ(1/1^2+1/2^2+・・・+1/(n-1)^2-4/5n^2)(-1)^(n-1)/n^3(2n,n)

となって,予想に反して,Rはたとえ有理数であったにしても,簡単なものにはならないらしいということです.

 ζ(3)は無理数であることしかわかっておらず,いまだζ(3)が超越数であるかどうかは知られていませんし,ζ(5),ζ(7),・・・が有理数なのか無理数なのかもわかっていません.アペリの方法はζ(5),ζ(7),・・・の場合の拡張されるに至っていないのです.

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