■j(z)関数の特殊値(その70)
代数関数とはならない場合を考えてみることにしましょう.指数関数:y=exp(x)は座標(0,1)を通りますが,点(0,1)がこの滑らかな曲線上の唯一の代数的点であって,自明な点(0,1)を除き代数的点を通ることができません.これが指数曲線や対数曲線が超越曲線と呼ばれる所以なのですが,これ以外のどの代数的点にもぶつからないのは驚くべきことです.
超幾何関数の値は微分方程式のモノドロミー群に深く関わってくるのですが,超越関数となる超幾何関数の代数的な変数での特殊値はふつう超越的です.しかし,超越関数でありながらも,ときどき予期されない代数的値をとることがあります.
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例をあげると,楕円積分と関わる保型関数
4√E4(z)=2F1(1/12,5/12;1;1728/j(z))
とのつながりから,ガウスの超幾何関数
2F1(1/12,5/12;1/2;1323/1331)=3/4・4√11
など,思いもかけないような式がヴォルファルトにより得られています.x座標1323/1331もy座標3/4・4√11も代数的数になるというわけですが,このように自明でない代数的点が存在するのです(→コラム「数にまつわる話」参照).
2F1(1/12,7/12;2/3;64000/64009)=2/3・6√253
などもその例ですが,現在,2F1ばかりでなく,一般的な超幾何関数nFn-1が代数的になる条件はボイカーズとヘックマンによりすでに決定されているようです.
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j(i)=1728=12^3
j(i√2)=8000=20^3
j((1+i√3)/2=0
j((1+i√7)/2=-3375=-15^3
j((1+i√11)/2=-32^3
j((1+i√19)/2=-96^3
j((1+i√43)/2)=-960^3
j((1+i√67)/2)=-5280^3
j((1+i√163)/2)=-640320^3
j(i)=1728,j(ω)=0のようにきわめて超越的な関数が、整数になってしまうのである。
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【5】ヴォルファルトの発見
ω1,ω2を1次独立な基底とする格子を考えます.その商τ=ω1/ω2を基本領域Γに属するようにとると,ある楕円曲線が構成され,判別式Δは重さ12のモジュラー形式となります.また,j(τ)は上半平面におけるΓ不変な重さ0のモジュラー関数となります.
虚2次体の虚数乗法の理論から,あるτに対する楕円モジュラー関数の値j(z)は代数的であることが知られています.逆にいうと,虚2次でない任意の代数的数に対しj(z)は超越数になるというのです.
そして,ヴォルファルトは
(1)Q(i)に属するあるτに対して,z=1−1/j(τ),2F1(1/12,5/12;1/2;z)が代数的点となるτが存在する
(2)Q(√−3)に属するあるτに対して,z=j(τ)/(j(τ)−1),2F1(1/12,5/12;1/2;z)が代数的点となるτが存在する
ことを示し,実際の代数的点
2F1(1/12,5/12;1/2;1323/1331)=3/4・4√11
2F1(1/12,7/12;2/3;64000/64009)=2/3・6√253
を求めています(1985年).
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1−1/j(τ)=1323/1331
8/1331=1/j(τ)、j(τ)=1331/8
(1)Q(i)に属するあるτに対して,有理数になってしまうのである。
j(τ)/(j(τ)−1)=1323/1331
j(τ)=1323/1331(j(τ)−1)
8/1331=-1323/1331j(τ)
j(τ)=-8/1323
(2)Q(√−3)に属するあるτに対して,,有理数になってしまうのである。
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