■チェビシェフの素数定理(その42)

【2】素数定理の再生性と平均値の定理

 nとknの間にある素数の個数を,直接,素数定理から漸近表現を求めると

  π(kx)−π(x)〜kx/ln(kx)−x/ln(x)

 〜lx/(lnx+lnk)−x/lnx

 〜(kxlnx−x(lnx+lnk))/lnx(lnx+lnk)

 〜((k−1)xlnx−xlnk))/(lnx)^2(1+lnk/lnx)

 〜((k−1)x/lnx−xlnk/(lnx)^2)(1−lnk/lnx)

 〜(k−1)x/lnx−kxlnk/(lnx)^2

 したがって,その平均値は

  {π(kx)−π(x)}/(k−1)x〜1/lnx−klnk/(k−1)(lnx)^2

  {π(kx)−π(x)}/(k−1)x〜1/lnx

となり,素数定理は再生性を有していることがわかる(klnk/(k−1)(lnx)^2を除いて,素数定理にほぼ等しくなる).

 しかしながら,この漸近表現は,たとえばx=10,k=100のとき,

  π(1000)−π(10)〜−438.637

となって,xに較べてkが小さいときしか意味ともたないことがわかる.

 ((k−1)xlnx−xlnk))/(lnx)^2(1+lnk/lnx)〜((k−1)x/lnx−xlnk/(lnx)^2)(1−lnk/lnx)

の誤差が大きいからである.

 kが大きいときは

  π(kx)−π(x)〜kx/ln(kx)−x/ln(x)

  π(1000)−π(10)〜140.422

ベルトラン・チェビシェフの定理(k=2)は絶妙の間合いということになるのだろう.

 なお,

  π(x)=x/lnx

として,平均値の定理を適用すると

  π’(x)=(lnx−1)/(lnx)^2

より,1<θ<kとして

  (lnθx−1)/(lnθx)^2=kx/lnkx−x/lnx

  (kx/lnkx−x/1nx)(lnθx)^2=lnθx−1

(意味があるかどうかは別にして)lnθxに関する2次方程式を解くことになる.

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