■超越数とその仲間たち(その69)

  −d=19,43,67,163

はとても面白い性質をもっています.

  x=exp(π√−d)

が数値的にとても整数に近くなりうるというものです.

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  exp(π√19)=12^3(3^2−1)^3+744−0.22

  exp(π√43)=12^3(9^2−1)^3+744−0.00022=884736743.999777・・・

  exp(π√67)=12^3(21^2−1)^3+744−0.0001113=147197952743.99999866・・・

  exp(π√163)=12^3(231^2−1)^3+744−0.00000000000075=262537412640768743.99999999999925007・・・

 これは決して偶然の一致ではありません.xに対しては

  x−744+196884/x−21493760/x^2+・・・

がぴったり整数になることがわかっています.これらの係数は重さ0のモジュラー関数においてq→−1/xとしたものです.

 xが大きいほど後半の項は小さな値となるので,x自身は極めて整数(実は立方数)に近い数になるというわけです.

  exp(π√19)=96^3+744−ε

  exp(π√43)=960^3+744−ε

  exp(π√67)=5280^3+744−ε

  exp(π√163)=640320^3+744−ε

 exp(π√163)は,1965年のエイプリル・フールのジョークとして,マーチン・ガードナーは整数だと主張しました.

  exp(π√163)=640320^3+744

 しかしながら,ゲルフォント・シュナイダーの定理より,exp(π√163)は超越数であって,整数にはならないことが証明されます.もしこれが整数になったら一大事ですが,整数との差はわずか1兆分の1未満であって,見事としかいいようがありません.

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