■ディオファントス近似・超ディオファントス近似(その28)

 abc予想はもともとフェルマーの最終定理を導くための道具として,マッサーとエルテルレにより提案されたものであるが,複素関数の値分布理論であるネヴァンリンナ理論と類似の結果が成り立つことが多く,ボエタによって,ロスの定理の世界とネヴァンリンナ理論の世界の関連か詳しく調べられた.

 ロスの定理やabc予想の高次元かとして「ボエタ予想」がある.ボエタ予想の帰結もいくつか知られている.

[1]ファルティングスの定理

[2]シュミットの部分空間定理

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【1】シュミットの部分空間定理

 超越数の理論から,任意のεに対してc>0が存在して,すべての整数p,q1,・・・qnに対して

  |q1e+・・・+qne^n−p|>cq^(-n-ε)   q=max|qi|

が成り立つが,ロスの定理を一般化したシュミット(1971年)の研究は,e,・・・,e^nを有理数上1次独立であるような代数的数θ,・・・,θ^nに置き換えても同じことが成り立つことを示している.

  |q1θ+・・・+qnθ^n−p|>cq^(-n-ε)   q=max|qi|

シュミットの拡張は部分空間定理と呼ばれるものである.

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【2】無理性の階層

  |α−p/q|<c/q^k

に無限個の解があるkの上限を示すと

  有理数:   1

  代数的数:  2

  e:     2

  ζ(3) :   5.441243

π:     8.016045

  リュービル数:∞

[補]エルデシュ数:Σ1/(k!+1)=1.526068・・・

   カタラン数 :Σ(−1)^k-1/(2k−1)^2=0.915965・・・

   オイラー数 :lim(Σ1/k−lnn)=0.577215・・・

の正体は依然として不明である.

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