■ディオファントス近似・超ディオファントス近似(その9)
無限個の近似分数列{an/bn}で非常によく近似できる実数αについて
|α−an/bn|<1/bn^2
が成立するならば,αは無理数です(ディリクレの定理:右辺はこの定数倍でもよい).
αが有理数ならば,
|α−a/b|<1/b^2
を満たすものは有限個しか存在しないので,無限個の有理数で
|α−an/bn|<1/bn^2
を満たすものが存在するというのは無理数特有の性質といえます.
それでは
|α−an/bn|<1/bn^k
が無限に多くの解をもつことができるような最大の実数kはいくつになるのだろうか? kを求める問題は1種の最良近似問題である
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【1】ディリクレの定理の証明
αが有理数で,α=p/qと表されたとする.{bn}は次々に大きくなる整数列であるから,q<bnである番号をとると
|α−an/bn|=|p/q−an/bn|=|pbn−qan|/qbn
しかし,an/bnはαとは一致しないので分子は1以上.したがって
|α−an/bn|≧1/qbn
であるが,これが<1/bn^2なのでq>bnとなり矛盾.すなわち,αは有理数ではあり得ないことになる.
このように,「ディリクレの定理」の証明は,引き出し論法あるいは鳩の巣原理と呼ばれるものから容易に導かれる.この原理はn個の巣箱にn+1羽の鳩が入っているならば,ある巣箱には少なくとも2羽の鳩が入っていなければならないというものである.
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