■ディオファントス近似・超ディオファントス近似(その3)
【3】ロスの定理
これらの結果はすべてαの次数nに関係した結果であったが,ジーゲルは実はk≦2であろうと予想した.彼の予想が正しいとすると,ディリクレの定理からk≧2であるから,合わせるとk=2という結論を得ることができる.
この予想は1955年,イギリスの数学者ロスによって証明された.
「無理数αが無限に多くの既約分数解{an/bn}をもてば,k≦2が成立する.」
つまり,ロスの定理は次数n≧2の代数的数αは最良無理測度2をもつというもので,ディリクレに始まった無理数を有理数で近似する問題に関する決定的な結果(k=2)であって,ディオファントス近似に対する一応の終止符が打たれたことになる.この業績によりロスにはフィールズ賞が与えられることになった(1958年)
[参]平松豊一「初等数学アラベスク」牧野書店
によると,この証明は高度な数学理論を使わずとも可能なごく初等的なものであるそうである.いささかの感動をおぼえる話である.
なお,リドゥやシュミットによるロスの定理の拡張もあるとのこと.リドゥ(1957年)はp,qの素因子に関するある制限のもとにkの下限がより小さくできることを示した.シュミット(1971年)の拡張は部分空間定理と呼ばれるものである.
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