■超越数とその仲間たち(その16)
【1】tan1°の無理数性
京都大学の入試問題(2006年)に
[Q]tan1°は有理数か? 無理数か?
という問題が出題されているそうである.
[A]背理法で証明する,正接の加法定理
tan(x+y)=(tanx+tany)/(1−tanx・tany)
において,tanxとtanyの両者が有理数ならばtan(x+y)も有理数である.
tan1°が有理数と仮定すると,tan2°も有理数である.tan2°が有理数と仮定すると,tan3°も有理数である.この操作を繰り返すとtan30°も有理数となるが,実際はtan30°=1/√3(無理数)であるから矛盾する.(もちろん,tan60°も有理数となるから矛盾であるとしてもよい.)
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[Q]tan1°は代数的数か? 超越数か?
[A]論法はいささか趣きが異なるが,数学的帰納法で証明する.
tant°が整数係数の多項式ft(x),gt(x)を用いて,
tant°=gt(tan1°)/ft(tan1°)
と表せるものとする.
tan(t+1)°
=(tan1°+tant°)/(1−tan1°・tant°)
=(tan1°+gt(tan1°)/ft(tan1°))/(1−tan1°・gt(tan1°)/ft(tan1°))
=(tan1°ft(tan1°)+gt(tan1°))/(ft(tan1°)−tan1°gt(tan1°))
したがって,
ft+1(x)=ft(x)−xgt(x)
gt+1(x)=xft(x)+gt(x)
とおくことによって
tan(t+1)°=gt+1(tan1°)/ft+1(tan1°)
と表すことができる.
数学的帰納法により
tan45°=g45(tan1°)/f45(tan1°)=1
であるから,tan1°は整数係数の代数方程式
g45(tan1°)−f45(tan1°)=0
の解となる.よって,tan1°は代数的数である.
tan30°でもtan60°でもいけない理由がおわかりいただけたであろうか.tan45°=1の最小多項式は1次であるから,t=1のときはf1(x)=1,g1(x)=xとすればよく,そうすれば
ft+1(x)=ft(x)−xgt(x)
gt+1(x)=xft(x)+gt(x)
よりf2(x)は2次,g2(x)は1次,f3(x)は2次,g3(x)は3次となる.
したがって,
g45(x)−f45(x)
の最小多項式は高々45次,tan1°は高々45次の代数的数である.
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tan45°=1であるが,
[Q]tana°=1/2,tanb°=1/4となるa,bは有理数だろうか?
[A]aもbも無理数.
[証1]aが有理数ならある整数nに対してnaは360の倍数になる.また,naは(2+i)^nの偏角で,(2+i)^nは実数.したがって,(2+i)^nは共約複素数(2−i)^nに等しい.
しかし,2+iと2−iは5の異なるガウス素数であり,素因数分解の一意性に反する.
[証2]bが有理数ならある整数nに対してnaは360の倍数になる.また,naは(4+i)^nの偏角で,(4+i)^nは実数.したがって,(4+i)^nは共約複素数(4−i)^nに等しい.
しかし,4+iと4−iは17の異なるガウス素数であり,素因数分解の一意性に反する.
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