■ディオファントス・フェルマー・ワイルズ(その57)

 一般に,有限体Fpのn次拡大体Fp^n上の方程式

  x+y=z   (x,y,zはFp^nの元)

の(x,y,z)=0を除いた解の個数はp^2n−1であり,これがp^n−1個ずつのグループに分かれているので

  N(n)=(p^2n−1)/(p^n−1)=p^n+1,N(1)=Np

x^2+y^2=z^2の場合も,同様に

  N(n)=p^n+1,N(1)=Np

となります.

 ところが,x^3+y^3=z^3 on Fp^nについての解の数N(n)を求めることは簡単ではありません.これを求めるためには

  c(p)=p+1−N(1)=p+1−Np

とおいて,次の関数

  Z(T)=(1-c(p)T+pT^2)/(1-T)(1-pT)

を用います.この関数を合同ゼータ関数といいます.

 合同ゼータ関数は数学的知識の積み重ねのうえで定義された関数なので,おいそれとは説明できませんが,N(n)の母関数であって,m=1,2のときの合同ゼータ関数は

  Z(T)=1/(1-T)(1-pT)

このとき

  -log(1-T)=T+1/2・T^2+1/3・T^3+・・・

ですから

  N(n)/n・T^n=log{1/(1-T)(1-pT)}

=(T+1/2・T^2+1/3・T^3+・・・)+(pT+1/2・p^2T^2+1/3・p^3T^3+・・・)

=Σ(p^n+1)/n・T^n

これより

  N(n)=p^n+1,N(1)=Np

となります.

 Z(T)=(1-c(p)T+pT^2)/(1-T)(1-pT)

の場合は

  N(n)/n・T^n=log{(1-c(p)T+pT^2)/(1-T)(1-pT)}

=Σ(p^n+1)/n・T^n-(c(p)T-pT^2)-1/2・(c(p)T-pT^2)^2-1/3・(c(p)T-pT^2)^3+・・・

より

N(1)=p+1-c(p)

N(2)=(p+1)^2-c(p)^2

N(3)=p^3+1+3pc(p)-c(p)^3

N(4)=(p^2-1)^2+4pc(p)^2-c(p)^4

N(5)=p^5+1-5p^2c(p)+5pc(p)^3-c(p)^5

N(6)=(p^3+1)^2-9p^2c(p)^2+6pc(p)^4-c(p)^6

N(7)=p^7+1+7p^3c(p)-14p^2c(p)^3+7pc(p)^5-c(p)^7

N(8)=(p^4-1)^2+16p^3c(p)^2-20p^2c(p)^4+8pc(p)^6-c(p)^8

N(9)=p^9+1-9p^4c(p)+30p^3c(p)^3-27p^2c(p)^5+9pc(p)^7-c(p)^9

N(10)=(p^5+1)^2-25p^4c(p)^2+50p^3c(p)^4-35p^2c(p)^6+10pc(p)^8-c(p)^10

 この数値は小生が数式処理ソフトを用いずに手計算で求めたものであり,信頼率は50%以下と思われました.そこで畏友・阪本ひろむ氏にお願いしてMathematicaで確認してあります.

 とくに,p=2(mod3)のときはc(p)=0ですから,

  Z(T)=(1+pT^2)/(1-T)(1-pT)

N(1)=p+1

N(2)=(p+1)^2

N(3)=p^3+1

N(4)=(p^2-1)^2

N(5)=p^5+1

N(6)=(p^3+1)^2

N(7)=p^7+1

N(8)=(p^4-1)^2

N(9)=p^9+1

N(10)=(p^5+1)^2

で与えられます.

 なお,m=1,2のときの合同ゼータ関数

  Z(T)=1/(1-T)(1-pT)

がオイラー積

  ζ(s)=Σn^(-s)=Π(1−p^(-s))^(-1)

に似ているのに対して,

  Z(T)=(1-c(p)T+pT^2)/(1-T)(1-pT)

は,楕円曲線の場合のL関数

  Np=p+1+(誤差項)=p+1+Mp

  c(p)=−Mp

  L(s)=Π(1-c(p)p^(-s)+p^(1-2s))^(-1)

によく似ていることがわかります.

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