■ディオファントス・フェルマー・ワイルズ(その38)

 ピタゴラス方程式:x^2+y^2=z^2には無数の自然数解があるのですが,それでは連立2次のディオファントス方程式:

  x^2+y^2=z^2

  x^2−y^2=w^2

の自明でない自然数解を考えてみましょう(フィボナッチの問題).

 ただし,(1,0,±1,±1)などの自明な解は必ずあるわけですから,どのx,y,z,wも0でないものとします.

 実は,そのような答えをもたないことがフェルマーによって証明されていて,それがフィボナッチ・フェルマーの定理と呼ばれます.フィボナッチは西暦1200年頃,解は存在しないことを予想していたのですが,400年後にフェルマー得意の無限降下法によって証明が与えられました.すなわち(x,y,z,w)の最大公約数が1である任意の原始解を定めるとx’<xなる第2の原始解,x”<x’なる第3の原始解,・・・ができて矛盾を生じてしまうのです(要するに数学的帰納法).

 さらに,この定理を応用すると,

「3辺の長さが自然数であるような直角三角形と同じ面積をもつ,辺の長さが自然数の正方形は存在しない(x^2+y^2=z^2,xy=2t^2)」

「x^4−y^4=z^2の自然数解はない」

「x^4+y^4=z^4の自然数解はない(n=4の場合のフェルマー予想)」

などが証明できます.

命題「x^4+y^4=z^4をみたす自然数は存在しない」は命題「y^2=x^3−xの有理数解は(x,y)=(0,0),(±1,0)のみである」に帰着できることをみてきましたが,今回のコラムではフェルマーの問題:x^n+y^n=z^nを有限体Fp上で考えてみましょう.ただし,(x,y,z)=(0,0,0)は除外することにします.

 とはいってもすべてのnについて計算することはできませんから,

  x^3+y^3=z^3

に限定することになるのですが・・・.

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【1】x^3+y^3=z^3 on Fp

x^3+y^3=z^3 on Fpを扱った.自明な解(x,y,z)=(0,0,0)は解から除外することにして,Fpでの整数点の個数Npは,

  Np=0

  for x=0 to p-1

   for y=0 to p-1

    for z=0 to p-1

     a=x*x*x+y*y*y-z*z*z

     if (a mod p)=0 then Np=Np+1

next z

   next y

  next x

  Np=(Np-1)/(p-1)

のようなプログラムを組むだけで簡単に求めることができる.

 一般の素数pに対しては解の数Npは

  p  2  3  5  7  11  13  17  19  23

  Np  3  4  6  9  12   9  18  27  24

となる.

 p=5ではNp=p+1が成り立つが,p=7では成り立たない.他の場合も調べてみると,p=2(mod3)の場合,Np=p+1が成り立つことがわかる.

  p  Np   p+1

  2  3    ○

  3  4    ○

  5  6    ○

  7  9    ×

  11  12    ○

  13  9    ×

  17  18    ○

  19  27    ×

  23  24    ○

 p=1(mod3)の場合,Npは複雑であるが,その場合でも

  p+1−2√p<Np<p+1+2√p

が成り立つ.

 実は

  x^3+y^3=1   (x≠0,y≠0)

の解の個数をLpとおけば,

  Np=9+Lp

となることがわかっているので,Npを求める問題はLpを求める問題に帰着されたことになる.

  Lp=0

  for x=1 to p-1

   for y=1 to p-1

    a=x*x*x+y*y*y-1

    if (a mod p)=0 then Lp=Lp+1

   next y

  next x

  Np=9+Lp

  p  2  3  5  7  11  13  17  19  23

  Np  3  4  6  9  12   9  18  27  24

  Lp           0       0      18

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【2】Np+c(p)=p+1

 Np+c(p)=p+1という関係が成り立つとすると

  p  2  3  5  7  11  13  17  19  23

  Np  3  4  6  9  12   9  18  27  24

  c(p) 0  0  0 −1   0   5   0  −7   0

  c(p)=p+1−Np

となるq展開の係数をもつ保型関数は如何にという問題が残されている.

 これまででてきた保型関数は

  (その36)→ F(q)=qΠ(1-q^4n)^2(1-q^8n)^2

  (その37)→ F(q)=qΠ(1-q^n)^2(1-q^11n)^2

であったから,

  F(q)=qΠ(1-q^an)^2(1-q^bn)^2,a+b=12

の中から候補を探すとすると

  F(q)=qΠ(1-q^3n)^2(1-q^9n)^2

  F(q)=qΠ(1-q^6n)^2(1-q^6n)^2

が最も考えられるところである.

 阪本ひろむ氏に計算してもらった結果

  F(q)=qΠ(1-q^3n)^2(1-q^9n)^2

   =q-2q^4-q^7+5q^13+4q^16-7q^19-5q^25+2q^28+O(q^31)

  F(q)=qΠ(1-q^6n)^2(1-q^6n)^2

   =q-4q^7+2q^13+8q^19-5q^25+O(q^31)

 a+b=12の組み合わせをすべて試みたのだが,c(n)をフーリエ係数とする保型関数F(q)は得られなかった.

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