■ディオファントス・フェルマー・ワイルズ(その25)

【4】マルコフ予想

コラッツ予想は,ループが巡回することなしに1010・・・0101にたどり着くかどうかという問題になる.同じ値が現れないことをみたが,同じ値が現れなければいつかは1に収束すると思われるので,コラッツ予想では巡回しないことが本質のように思える.

同様の未解決問題に,マルコフ予想があげられる.3元2次のディオファントス方程式

  x^2+y^2+z^2=3xyz

のすべての解を求める問題は,たとえば3元3次の方程式x^3+y^3+z^3=x+y+zの場合とは違って,x,y,zの各変数に関して2次式になっているので1つの解の中の数を使って別の解を作ることができます.

 z=xy/2・{3±(9−4/x^2−4/y^2)^1/2}

であり,すべての解は特異解(1,1,1),(1,1,2)から生成されます.たとえば(x,y,z)=(1,1,1),(2,1,1),(5,1,2),(13,1,5),(29,5,2),・・・はひとつの整数解が次の解を導き,

  (x,y)=(1,1)→z=1,2

  (x,y)=(1,2)→z=1,5

  (x,y)=(1,5)→z=2,13

  (x,y)=(2,5)→z=1,29

 x≦y≦zとしても一般性は失われませんが,特異解(1,1,1),(1,1,2)以外のすべての解はx,y,zの値が相異なります(x<y<z).

 こうして,2次のディオファントス方程式x^2+y^2+z^2=3xyzの解として現れる,

  1,2,5,13,29,34,89,169,194,233,433,610,985,・・・

はマルコフ数と呼ばれます.

 

 大いに興味をかき立ててきたディオファントス方程式であるが,ここで3元2次のディオファントス方程式

  x^2+y^2+z^2=3xyz

の解(x,y,z)=(1,1,1),(2,1,1),(5,1,2),(13,1,5),(29,5,2),・・・を並べると,各解は他の3つの解に相隣り合い,2分木のように配置する.真の2分木なのか,同じ値が2つの別のルートから生成されることがあり得るかは有名な未解決問題である.

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[1]補足

 (p,q,r),(p’,q’,r’)をともに整数解とし,p≦q≦r,p’≦q’≦r’と仮定する.このとき,r=r’ならば,p=p’かつq=q’である.

 この予想,すなわち,同じ値が2つの別のルートから生成されることがあり得るかはどうかは今日でも有名な未解決問題である.

[2]1≦x≦y≦zとしても一般性は失われない.

  z=xy/2・{3±(9−4/x^2−4/y^2)^1/2}

であり,(x,y)=(1,1)からスタートすると

  →z^2+2=3z→z=1,2→(1,1,1),(1,1,2)

(x,y)=(1,2)からスタートすると→z=1,5→(1,1,2),(1,2,5)

  (x,y)=(1,1)→z=1,2

  (x,y)=(1,2)→z=1,5

  (x,y)=(1,5)→z=2,13

  (x,y)=(2,5)→z=1,29

[3]一般に(a,b,c)からスタートすると

(a,c,3ac−b),a≦c≦3ac−b

(b,c,3bc−a),b≦c≦3bc−a

も解となる.すると(1,1,1)には親がいないことになる.

[4]すべての解は特異解(1,1,1),(1,1,2)から生成される.

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