■ディオファントス・フェルマー・ワイルズ(その13)

【4】正方形充填問題

 リュカの等式は辺の長さが相続く整数列1,2,・・・,24の正方形を1辺の長さ70の正方形の中に詰め込める可能性があることを示唆しています.それでは,実際に,70×70の正方形を辺が1から24の相続く正方形によって埋めつくすことができるでしょうか.この問題の答えは否定的(不可能)です.1辺の長さ7の正方形を除くすべての正方形は詰め込めるのですが・・・.

 それならば,無駄な空間の割合を最小にして,辺の長さが1,2,・・・,nの正方形を全て詰め込むことができる最小の正方形の辺の長さはいくつでしょうか.また,相続く整数辺の正方形を使って長方形を充填できるでしょうか.

===================================

【5】立方体充填問題

 上記の問題を立方体に拡張することははるかに難しくなりますが,次に,たくさんの小立方体を立方体に詰め込む問題について考察してみましょう.最初のn個の立方数の和は平方数になります(Σk^3={n(n+1)/2}^2).

 フィボナッチはこれを次のように証明しました.

1^3=1,2^3=3+5,3^3=7+9+11,4^3=13+15+17+19,5^3=21+23+25+27+29,・・・

また,最初のn個の奇数の和は1+3+5+・・・+(2n−1)=n^2,最初のn項までに現れる奇数の全項数は1+2+3+・・・+n=n(n+1)/2

よって,1^3+2^3+3^3+・・・+n^3={n(n+1)/2}^2 =(1+2+3+・・・+n)^2

が示されます.

 三角数とはm(m+1)/2の型の自然数のことと定義すると,任意の立方数は2つの三角数の平方数の差と表されることがわかります.すなわち,y^3={y(y+1)/2}^2−{y(y−1)/2}^2がこの証明の根拠となっていることが理解されます.

 1^3+2^3+3^3+・・・は完全平方数ですが,はたして,この数は立方数になりうるでしょうか.

1^3+2^3+3^3+・・・=1(1^2)+2(2^2)+3(3^2)+・・・

より,この関連問題は,ある1つの正方形を1辺1の正方形1個,1辺2の正方形2個,1辺3の正方形3個,以下同様・・・,によって充填する問題といい換えてもよいのですが・・・.

 また,1からはじめなくてもよければ,3^2+4^2=5^2,18^2+19^2+・・・+28^2=77^2,3^3+4^3+5^3=6^3,11^3+12^3+13^3+14^3=20^3など連続した平方(立方)数の和が平方(立方)数となることはあるのですが,y^3={x(x+1)/2}2 にx=1,y=1以外の自明でない整数解はあるのでしょうか?

 実は,x=1を除きx(x+1)/2は立方数にはならないことが示されます.

===================================

【6】超立方体充填問題

 さらに,高次元化して,不定方程式

Σk^p =1^p +2^p +3^p +・・・+n^p =m^q

の解について考察してみてもおもしろいかと思われます.この不定方程式は(p,q)=(3,2)のときすべてのnについて,解をもちます.

1^3+2^3+3^3+4^3=10^2

はたまたまこうなったのではなく,最初のn個の立方数の和は平方数になります.また,(p,q)=(1,2),(3,4),(5,2)のとき無限に整数解をもちますが,不定方程式

Σk^s =1^s +2^s +3^s +・・・+n^s =m^s

では,s≧3の場合,x=y=1以外に解はないものと予想されています.すなわち,十分条件はおろか充填のための必要条件すら満足しません.有理数解ならば簡単に与えられる問題であっても整数解に限ると格段にむずかしい深遠な問題に昇華するのです.

===================================