■オイラー積と素数定理(その35)

 区分的な解析接続ではなく,もっとうまい手があります.結論を先にいうと,sを複素変数とするとき,関数等式

  ζ(s)=π^(s-1/2)Γ((1-s)/2)/Γ(s/2)ζ(1-s)

を用いればζ(s)をs=1(極)を除くすべての複素数に対して意味をもたせることができ,sを−1とすると値が−1/12,2とすると値が0になるというわけです.Γはガンマ関数です.

 また,

ξ(s)=1/2s(s-1)π^(-s/2)Γ(s/2)ζ(s)

あるいは

ξ(s)=π^(-s/2)Γ(s/2)ζ(s)

で定義すると

ξ(s)=ξ(1-s)

のように完全に左右対称な美しい形に書くことができます.ガンマ関数はゼータ関数の仲間と思ってほしい所以です.

 関数等式は

(1)sを複素変数として複素全平面への解析接続を与えることができること

(2)ζ(s)がRe(s)=1/2を対称軸とする美しい対称性をもっていること

を示しています.

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【1】関数等式の証明

 ゼータ関数とガンマ関数との間に

  ζ(s)=1/Γ(s)∫(0,∞)t^(s-1)/(exp(s)-1)dt

  ζ(s)=1/(1-2^(1-s))Γ(s)∫(0,∞)t^(s-1)/(exp(s)+1)dt

が成り立つのですが,まず,これらを導いてみましょう.

  Γ(s)=∫(0,∞)t^(s-1)e^(-t)dt

にt=nxを代入するならば

  Γ(s)/n^s=∫(0,∞)x^(s-1)e^(-nx)dx

が得られる.この式のnについての総和をとるなら

  ΣΓ(s)/n^s=Σ∫(0,∞)x^(s-1)e^(-nx)dx

        =∫(0,∞)x^(s-1)e^(-x){1+e^(-x)+e^(-2x)+・・・}dx

        =∫(0,∞)x^(s-1)e^(-x)/(1-e^(-x))dx

∵ 1+x+x^2+x^3+・・・1/(1−x)

        =∫(0,∞)x^(s-1)/(e^x-1)dx

これより

  Γ(s)ζ(s)=∫(0-∞)x^(s-1)/(e^x-1)dx

が得られます.

 また,交代級数

  φ(s)=1-1/2^s+1/3^s-1/4^s+・・・=Σ(-1)^(n-1)/n^s

を考えます.負項を正項に変えて,あとでその2倍を引きます.

  φ(s)=(1+1/2^s+1/3^s+1/4^s+・・・)-2(1/2^s+1/4^s+・・・)

     =(1-2^(1-s))ζ(s)

となります.

  ΣΓ(s)(-1)^(n-1)/n^s

=Σ∫(0,∞)x^(s-1)(-1)^(n-1)e^(-nx)dx

=∫(0,∞)x^(s-1)e^(-x){1-e^(-x)+e^(-2x)-・・・}dx

=∫(0,∞)x^(s-1)e^(-x)/(1+e^(-x))dx

∵ 1−x+x2 −x3 +・・・=1/(1+x)

=∫(0,∞)x^(s-1)/(e^x+1)dx

これより

  Γ(s)ζ(s)(1-2^(1-s))=∫(0-∞)x^(s-1)/(e^x+1)dx

が得られます.

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 次に,ガンマ関数の積についての有名な公式

  Γ(x)Γ(1-x)=π/sinπx・・・相反公式(相補公式)

  Γ(1/2+x)Γ(1/2-x)=π/cosπx

  Γ(x)Γ(x+1/2)=√πΓ(2x)/2^(2x-1)・・・乗法公式(倍数公式)

の相反公式(相補公式)

  Γ(x)Γ(1-x)=π/sinπx

を用いると

  ζ(s)=2Γ(1-s)sin(πs/2)(2π)^(s-1)ζ(1-s)

となりますが,さらに乗法公式(倍数公式)

  Γ(x)Γ(x+1/2)=√πΓ(2x)/2^(2x-1)

を用いれば

  sin(πs/2)=π/Γ(s/2)Γ(1-s/2)=√πΓ((1-s)/2)/2^sΓ(1-s)Γ(s/2)

より

  π^(-s/2)Γ(s/2)ζ(s)=π^((1-s)/2)Γ((1-s)/2)ζ(1-s)

と整理されます.

 これは

  ζ(s)=π^(s-1/2)Γ((1-s)/2)/Γ(s/2)ζ(1-s)

の形にも書けるのですが,前者の方がより対称性の高い形でしょう.

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