■オイラー積と素数定理(その26)
オイラーは何年も,オイラー級数(1735年)
π^2/6=1+1/2^2+1/3^2+1/4^2+1/5^2+・・・
にとりつかれて,そこに円周率πが現れることに大いに驚き,感動したのであった.
グレゴリー・ライプニッツ級数(1673年)
π/4=1−1/2+1/5−1/7+1/9−1/11+・・・
の左辺にも半径1の円の円周の長さπがおかれている.
この式の右辺は
(1+1/3)^-1(1−1/5)^-1(1+1/7)^-1(1+1/11)^-1(1−1/13)^-1・・・
と書き直すことができる.
すなわち,4で割って3余る素数のところに
(1+1/p)^-1
4で割って1余る素数のところに
(1−1/p)^-1
とおくと,
4=2π・1/2・(1+1/3)(1−1/5)(1+1/7)(1+1/11)(1−1/13)・・・
加藤和也「素数の歌が聞こえる」ぷねうま舎
によると,分子のπは(実数世界での円の長さ)・(2進整数の世界での円の長さ)・(3進整数の世界での円の長さ)・(5進整数の世界での円の長さ)・・・となって,πを素数達が協力しあって生み出している様子を表している,一方,分母の4は円x^2+y^2=1上に整数点が4個あることを表しているという.
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【1】グレゴリー・ライプニッツ級数のオイラー積
グレゴリー・ライプニッツ級数のオイラー積は
(1+1/3)^-1・(1−1/5)^-1・(1+1/7)^-1・(1−1/11)^-1・(1+1/13)^-1・・・
=(1−1/3^s+1/9^s−1/27^s+・・・)(1+1/5^s+1/25^s+・・・)(1+1/7^s+・・・)・・・
というように素数についての積の形に書くことができる.このような関係から,奇数全体についての交代級数の話が素数全体についての積の話になる.
これは,ディリクレのL関数
L(s,χ)=Π(1−χ(p)p^-s)^-1=Σχ(n)n^-s
において,
χ(p)=(−1)^(p-1)/2,χ(n)=(−1)^(n-1)/2
L(s)=Π(1−(−1)^(p-1)/2p^-s)^-1=Σ(−1)^(n-1)/2n^-s
としたものである.
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【2】深リーマン予想(DRH)の例
L(1/2)=Π(1−(−1)^(p-1)/2p^-1/2)^-1=C
とする.
C=(1+1/3^-1/2)^-1・(1−1/5^-1/2)^-1・(1+1/7^-1/2)^-1・(1−1/11^-1/2)^-1・(1+1/13^-1/2)^-1・・・
実は,Cが収束すれば,L(s)のリーマン予想が成り立つことが知られている.そのうえ「Cが収束すること」は「L(s)のリーマン予想が成り立つ」ことよりも深いことが知られている.この意味で「Cが収束する」という予想はL(s)に対する「深リーマン予想」と呼ばれているのである.
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「深リーマン予想」をスローガン風にいえば「オイラー積をそのまま考えようということである」 (黒川信重)
[参]黒川信重「リーマン予想の先へ」東京図書
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