■フェルマーが考察した3つの問題(その4)

[1]3辺の長さがすべて整数、かつ面積が平方数の直角三角形は存在するか?

[2]y^2=x^3-xの(0,0),(±1,0)以外の有理数解をもつか?

[3]方程式x^4+y^4=z^4は自明でない整数解をもつか?

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 曲線上の有理点全体を1つの変数の有理式として表すことのできる曲線を有理曲線といいます.楕円曲線は有理曲線でないことが知られています.

(2次曲線)

 原点を中心とする半径1の円:x^2+y^2=1の円周上のひとつの有理点が(0,1)です.この点を通る直線y=mx+1と単位円との交点は,代入して因数分解すれば

  x^2+(mx+1)^2=1

  x((1+m^2)x+2m)=0

より

  x=(2m)/(1+m^2),

  y=mx+1=(1−m^2)/(1+m^2)

と表すことができます.これによって,円周上の点(x,y)が有理点であるためには,mが有理数であることが必要十分条件であることがわかります.すなわち,単位円上のすべての有理点は,mの関数

  x=(2m)/(1+m^2),

  y=±(1−m^2)/(1+m^2) で表すことができます.

 x^2+y^2=2(半径√2の円)において(1,1)は有理点で,この点を通る直線の方程式:y−1=m(x−1)を(x^2−1)+(y^2−1)=0に代入して因数分解すると

  x=(m^2−2m−1)/(m^2+1)

  y=(−m^2−2m+1)/(m^2+1)

が得られます.m=∞に対応する(1,−1)も有理点です.

 

 このように,円の有理点全体は1つの変数mによって一意化できますが,円ばかりではなく,現在では2次曲線に1つでも有理点があると実は無限に有理点があることがわかっています.2次曲線は有理点を無限のもつか,1つももたないかのどちらかであって,たとえば,x^2+y^2=3(半径√3の円)の上には有理点は1つも存在しません.このことは,互いに素な整数a,bに対する平方の和a^2+b^2は3で割れないということからわかります.

 

(3次曲線)

 デカルトの正葉線:x^3−3axy+y^3 =0(a>0)

は原点(0,0)を通ったところでループを描き自分自身と交差し,その後はy=−x−aを漸近線とする長くゆるやかに曲がった弓形曲線を描きながら(∞,−∞),(−∞,∞)に遠ざかっていきます.すなわち,x+y+a=0を漸近線とする3次曲線ですが,原点(0,0)が有理点ですから,y=mxとおくことによってパラメータ表示の形に書くことができます.

  x=3am/(1+m^3),

  y=3am^2/(1+m^3)

 この3次曲線は重根をもち,原点(0,0)が特異点になります.そのため,この曲線上のすべての有理点を,このようにパラメトライズすることができました.同様に,y^2=x^3やy^2=x^2(x+1)は楕円曲線ではありません.前者は(t^3,t^2),後者は(t^2−1,t(t^2−1))とパラメトライズできます.一般に,f(x,y)=0が3次式のとき,その曲線上に特異点と呼ばれる点が存在するかどうかで,曲線のもつ性質が大きく異なってきます.

(4次曲線)

 2定点(−a,0),(a,0)からの距離の和が一定となる点の軌跡は楕円,差が一定の点の軌跡は双曲線です.また,商が一定の点は円(アポロニウスの円)を描きます.それでは積が一定の点はどのよう軌跡を描くでしょうか.

(答)はカッシーニ曲線.

  {(x+a)^2 +y^2 }{(x−a)^2 +y^2 }=c^2

  (x^2 +y^2 )^2 −2a^2 (x^2 −y^2 )=c^2 −a^4

  r^4 −2a^2 r^2 cos2θ+a^4 =c^2

 2次の多項式f(x,y)=0,すなわち楕円,放物線,双曲線が円錐を平面で切断したときの切り口として現れたように,カッシーニ曲線はトーラス(ドーナツ)の平面による切断面として現れることが知られています.

 定数cが2定点間の距離の半分aの2乗に等しいとき,レムニスケート(双葉曲線)と呼ばれます.レムニスケートは8の字形(8を90°回転させ横向きにした∞形)をしていて,その直交座標系での方程式は4次曲線(x^2 +y^2 )^2 =2a^2 (x^2 −y^2 ),極座標系ではr^2 =2a^2 cos2θとなります.とくに,2定点を(−1/√2,0),(1/√2,0)と定めると,レムニスケートの方程式は極座標で書くとr^2 =cos2θ,直交座標で書くと(x^2 +y^2 )^2 =x^2 −y^2 となります.したがって,極座標による式のほうが,直交座標による式よりかるかに簡単です.

 また,a=1/√2のとき,レムニスケートは,

  x=cosθ/(1+sin^2θ)

  y=sinθcosθ/(1+sin^2θ)

ここで,

  t=tan(θ/2)

を使うと

  sinθ=2t/(1+t^2)

  cosθ=(1−t^2)/(1+t^2)

と表示されますから,

  x=t(t^2+1)/(1+t^4 )

  y=−t(t^2−1)/(1+t^4 )

のようにパラメトライズすることができます.

 レムニスケートには円に共通する性質があり、定規とコンパスだけで奇数のn等分することができる必要十分条件はnがフェルマー素数(n=22^m+1の形の素数:3,5,17,257,65537)であることです.なお,

  x^2 +y^2 −z^2 +(x^2 +y^2 +z^2)^2 =0

は,レムニスケートをその主軸の回りに回転することによって生成される曲面です.

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