■ポアンカレ円板と立体射影(その2)

 エッシャーの絵「円の極限」では,たとえば,長さ1の棒をもって円の境界の方に移動すると,長さ1の棒はこの空間の中にいる人にとってはずっと長さ1であるが,外にいる人から見ると境界に行けば行くほどだんだん短くなって最終的に点になってしまう.

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 ポアンカレはユークリッド平面をポアンカレ円板に置き換え,直線を円と直角に交差する弧に置き換えることで,双曲線幾何学の模式図を作成した.

 まず,リーマン球面(x^2+y^2+z^2=1)から平面(X,Y)への立体射影が円周を円周に写すことをの示してみたい.

 三角形の相似より,X^2+Y^2=R^2として,

  x=2X/(R^2+1),y=2Y/(R^2+1),

  z=(R^2−1)/(R^2+1)

 ここで,平面曲線(X+a)^2+(Y+b)^2=c^2を考えると,この方程式は

  R^2+2aX+2bY=d,d=c^2−a^2−b^2

と書き直すことができる.

 さらに,これを

  2aX/(R^2+1)+2bY/(R^2+1)+(d+1)(R^2−1)/2(R^2+1)=(d−1)/2

  2ax+2by+(d+1)z=d−1

と書き直すことができる.

 これは北極(0,0,1)を通らない平面の方程式であり,球面との交わりは円周である.すなわち,平面の円周の原像は球面の円周であり,平面の直線の原像は北極を通る球面の円周である.(その間の角度を変えないことの証明は省略)

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 この立体射影により赤道上の点は平面上の円周に,南極点は円の中心に投影される.南半球の点は円の内側に,北半球の点は円の外側に投影されるが,立体射影の最も注目すべき性質は,球面上の円を平面上の円へ投影し,球上で交差するこの間の角度が維持されることである.

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