■ランダムウォークの母関数と準超幾何関数(その52)
【4】ガウス測度の集中
格子上のランダムウォークについて
(1)nステップの後の1次元酔歩が原点からの距離が√nのオーダーであること
(2)nステップの後のd次元酔歩も原点からの距離が√nのオーダーであること
が示されましたが,これは拡散現象では一般的にいえることであることがわかります.
格子上のランダムウォークは,ブラウン運動などの拡散モデルとしてよく知られていますが,格子のモデルはブラウン運動の離散化とみなすことができるので,局所的にみると離散的過程であっても,大域的にみると連続空間に分布した連続的なn次元ガウス分布とみることができます.
n次元ガウス分布にしたがってランダムに選んだ点の原点からの距離は期待値√nの周りに鋭く集中していますから,半径√nの球面Sn-1上の一様分布からランダムに点を選ぶことに類似しています.このことから,ガウス測度の集中に対する同様な結果については
γ(A)≧1/2
γ(At)≧1−exp(ーt^2/2)
が成り立つことが知られています.
この不等式には次元nが現れないのですが,それは半径√nの球面Sn-1に対する状況と非常によく似ていることから理解されます.また,係数2は現れませんから,球面の状況と本質的に違うところは係数だけと考えることができます.
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