■球殻と高次元立方体の体積(その11)

【3】スターリングの公式と漸近評価

 n次元超立方体[-1,1]^n(体積:2^n)において,単位超球が占める比率は,n=2であればπ/4(79%)であるが,n=5のときは16%に下落し,n=10となると0.25%になることも理解されます.

n Vn/2^n

1 1

2 0.79

3 0.52

4 0.31

5 0.16

6 0.08

7 0.04

8 0.02

9 0.006

10 0.0025

 Vn/2^nは,n=10のとき,すでに10^(-3)より小さくなるのですが,これを有名なスターリングの近似公式

  k!=√2π・k^(k+1/2)・exp(−k)

を使って書き直してみましょう.すると

  Vn/2^n〜(πe/2n)^(n/2)/√πn

のように振る舞うことがわかります.

 粗くいうと

  Vn/2^n〜(πe/2n)^(n/2)

のオーダーとなりますから,2n>πe=8.539・・・すなわちn>5のとき,Vn/2^nは急激に小さくなることが示されます.

 ここで重要なのは,単位超球を超立方体中に置くと,次元が大きくなるにつれて隙間がより大きくなる点です.内接球が立方体の中で無視できるほど小さな粒子のようになり,したがって,高次元において超立方体内に一様分布する標本を考えるとき,低次元の場合とは対照的に,大部分のデータは超球外に位置することになります.n=20では1個の超球内の点に対して,4千万個の点が超球外にあることになります.

 また,単位立方体と同じ体積をもつn次元超球の半径rは

  Vnr^n=1

より

  r=Vn^(-1/n)

ですから

  r〜(n/2πe)〜0.24√n

のように増加することも理解されます.

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