■n次元平行2n面体とn+1面体の体積(その2)

 2つのベクトルa↑,b↑を基底とする平行体(平行四辺形)の面積は,外積は

  a↑×b↑

3つのベクトルa↑,b↑,c↑を基底とする平行体(平行六面体)の体積は,スカラー三重積

  (a↑×b↑)・c↑

すなわち,外積a↑×b↑とベクトルc↑の内積で与えられます.

 |a↑|=a,|b↑|=bとすれば,平行四辺形の面積は,

  S=absinθ

ですから,

  S^2=a^2b^2(1−cos^2θ)

    =|a↑|^2|b↑|^2−(a↑・b↑)^2

    =|a↑・a↑  a↑・b↑|

     |b↑・a↑  b↑・b↑|

 同様に,平行六面体の体積は

  V^2=|a↑・a↑  a↑・b↑  a↑・c↑|

     |b↑・a↑  b↑・b↑  b↑・c↑|

     |c↑・a↑  c↑・b↑  c↑・c↑|

で与えられます.

 これらのように,内積の行列式で定義される行列式をグラムの行列式(グラミアン)といいます.平行体の面積・体積はグラミアンの平方根に等しくなるというわけです.

 また,座標を使って表せば,n+1個の点の座標に(1,1,1,・・・,1)を加えて作られる(n+1)次の行列式の絶対値になります.

  |S|=|1 x1 y1|   |V|=|1 x1 y1 z1|

      |1 x2 y2|       |1 x2 y2 z2|

      |1 x3 y3|       |1 x3 y3 z3|

                     |1 x4 y4 z4|

 原点が含まれるときは,

  |S|=|x1 y1|   |V|=|x1 y1 z1|

      |x2 y2|       |x2 y2 z2|

                   |x3 y3 z3|

のように展開されます.

 なお,これらはそれぞれn次元単体の体積のn!倍になりますから,三角形面積,四面体の体積は,

  S’=S/2

  V’=V/6

 また,4辺の長さがa,b,cで与えられた三角形,6辺の長さがa,b,c,d,e,fで与えられた四面体の場合は,

  2^2(2!)^2S’^2=|0  a^2 b^2 1|

             |a^2 0  c^2 1|

             |b^2 c^2 0  1|

             |1  1  1  0|

  2^3(3!)^2V’^2=|0  a^2 b^2 c^2 1|

             |a^2 0  d^2 e^2 1|

             |b^2 d^2 0  f^2 1|

             |c^2 e^2 f^2 0  1|

             |1  1  1  1  0|

となります.

 前者はヘロンの公式にほかなりませんが,ヘロンの公式とは,任意の三角形の三辺の長さをa,b,c,面積をΔとして,

Δ^2=(2a^2b^2+2b^2c^2+2c^2a^2−a^4−b^4−c^4)/16

  =(a+b+c)(−a+b+c)(a−b+c)(a+b−c)/16

ここで,2s=a+b+cとおくと

  Δ^2=s(s−a)(s−b)(s−c)

となり,おなじみの平面三角形のヘロンの公式が得られます.

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[補]正5胞体と五角形

 4次元空間の単体(5胞体)の体積は係数1/24を除いて行列式

  24|V|=|1  1  1  1  1 |

        |x11 x21 x31 x41 x51|

        |x12 x22 x32 x42 x52|

        |x13 x23 x33 x43 x53|

        |x14 x24 x34 x44 x54|

で表されます.

 ここで,右辺の第i列から第i+1列を引く操作をxi=1,2,3,4の順に繰り返すと

  24|V|=|x11−x21 x21−x31 x31−x41 x41−x51|

        |x12−x22 x22−x32 x32−x42 x42−x52|

        |x13−x23 x23−x33 x33−x43 x43−x53|

        |x14−x24 x24−x34 x34−x44 x44−x54|

 この転置行列を右からかけると

  24^2V^2=|Σ(xik−xi+1k)(xjk−xj+1k)|

       =|ai↑・aj↑|

すなわち,グラミアンで与えられます.

 さらにここで正5胞体(各辺の長さを1,各内角をθ)とすると,

  ai↑・ai↑=1,ai↑・ai+1↑=cos(π−θ)=−cosθ

後者をxとおくと,x+y=−1/2なるx,yについて

  24^2V^2=|1 x y y|

        |x 1 x y|

        |y x 1 x|

        |y y x 1|

となります.

 この行列式はx,yについて対称式であり,

  x^4−2x^3y−x^2y^2+y^4+4x^2y+4xy^2−3x^2−3y^2+1

と展開されます.これが

  (x^2−3xy+y^2+x+y−1)(x^2+xy+y^2−x−y−1)

 さらに,黄金比:τ=(√5+1)/2,τ^(-1)=(√5−1)/2を用いると

  (τx−τ^(-1)y−1)(τ^(-1)x−τ^(-1)y+1)(x^2+xy+y^2−x−y−1)

と因数分解できます.これは計算機による数式処理の初歩の演習問題といえるでしょう.

 この正5胞体が3次元に退化する条件は

  V=0,x+y=−1/2

を解くことにより,

  x=(√5−1)/4,−(√5+1)/4

すなわち,

  θ=108°(正五角形)または36°(星形五角形)

となり,3次元を通り越して一挙に2次元まで退化してしまいます.

 すなわち,正5胞体は平面の正五角形と星形五角形の中間の4次元図形と解釈できるというわけです.

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