■n次元単位球の体積(その5)

【1】等周不等式

 

 平面凸集合に関して,周の長さLが一定で面積Aが最大の図形(面積が一定で周の最小な図形)は円であるという事実はよく知られています.そのことはL2 ≧4πAという不等式で表現されます.等号は円のときだけ成立します.

 同様に,3次元凸集合に対し,表面積をS,体積をVとするとS3 ≧36πV2 が成り立ちます.等号成立は球のときだけで,すべての立体中で球が表面積に対して最大の体積をもっています.

 そこで,等周不等式

  L2 ≧4πA

  S3 ≧36πV2

をどんな次元にも適用できるように公式化してみましょう.

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 さて,立体図形のS3 /V2 は平面図形のL2 /Aの相当していて,等周比あるいは等周定数と呼ばれます.半径rのn次元球の体積はVnr^n,表面積はnVnr^(n-1)となりますから,等周比を無次元化するために,

  n次元等周比=表面積^n/体積^(n-1)

と定義すると,

  n次元等周比≧n^nVn=n^nπ^(n/2)/Γ(n/2+1)(=Cn)

を得ることができます.等号は超球のときに限ります.

 とくに,n=2のときとn=3のときについては,

  C2=4π,C3=36π

になること,すなわち,

  L2 ≧4πA

  S3 ≧36πV2

が証明されました.

 以下,

  C4=2^7π^2,C5=8/3*5^4π^2,C6=6^5π^3,・・・

となりますが,等周比が有理数(整数)×πの形となるのは,2次元・3次元だけのようです.

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