■n次元単位球の体積(その2)

【1】n次元単位超球の体積Vnと表面積Sn-1

 ガウス積分をn次元に拡張し,

I=int(-∞,∞)exp(-x12+x22+・・・+xn2)dx1dx2・・・dxn

を考えるとint(-∞,∞)exp(-x2)dx=π^(1/2)のn重積分より,直ちにI=π^(n/2)を得ることができます.

 n次元ガウス積分を別の方法,すなわち,直交座標でなく極座標で求めてみましょう.球に相当するn次元の図形を超球と呼びます.n次元単位超球{x12+x22+・・・+xn2≦1}の体積をVnとすると,V1=2(直径),V2=π(面積),V3=4π/3(体積)はご存知でしょう.また,単位超球の表面積Sn-1はnVn,半径rのn次元球の体積はVnr^n,表面積はnVnr^(n-1)となります.

 ガウス積分の被積分関数を原点を中心とする半径rの球面上で積分し,次にr=0からr=∞まで積分すると,半径rの球面上で被積分関数は一定値exp(-r2)をとり,表面積はnVnr^(n-1)ですから,

I=int(0,∞)exp(-r2)nVnr^(n-1)dr

=nVnint(0,∞)r^(n-1)exp(-r2)dr

z=r2と変数変換するとdz=2rdrより

I=nVn/2int(0,∞)z^(n/2-1)exp(-z)dz

=Vnn/2Γ(n/2)    n/2Γ(n/2)=Γ(n/2+1)

=VnΓ(n/2+1)

したがって,

Vn=π^(n/2)/Γ(n/2+1)

を得ることができます.また,Γ(m+1)=m!より,この結果は,形式的に

Vn=π^(n/2)/(n/2)!

と書くことができます.

 nが整数のとき,実際にVnの値を計算してみると,超球の体積はn=5のとき最大8π2/15=5.2637・・・となり,以後は減少します.

1次元  2次元  3次元  4次元  5次元  6次元

 2    3.14   4.19   4.93   5.263   5.167

(次元を整数に限らなければ5.256次元で最大となり,そのときの体積は5.277・・・である.)

Vn-1がわかれば,Vnは漸化式:

Vn/Vn-1=Γ(1/2)Γ{(n+1)/2}/Γ(n/2+1)=B(1/2,(n+1)/2)

によって求めることができますが,この計算は面倒ですから,Vn-2との漸化式

Vn/Vn-2=2π/n

を用いると任意のnに対して

nが奇数であればVn=2(2π)^((n-1)/2)/n!!

nが偶数であればVn=(2π)^(n/2)/n!!

とも書けることも理解されます.

n→∞のとき

Vn/Vn-2=2π/n→0

Sn-1/Sn-3=nVn/(n-2)Vn-2=2π/(n-2)→0

ですから,不思議なことに,単位球面の体積や表面積はn→∞のとき0に収束するのです.また,このことから,n次元単位超立方体[-1,1]^nにおいて,単位超球が占める比率は,n=2であればπ/4(79%)であるが,n=5のときは16%に下落し,n=10となると0.25%になることも理解されます.高次元において,超立方体内に一様分布する標本を考えるとき,低次元の場合とは対照的に,大部分のデータは超球外に位置することになります.

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