■円周率の計算(その27)

【1】πの積分近似

 π=3.141592653589・・・の近似値として有名なのが

  22/7=3.142857142857・・・

  355/113=3.141592920353・・・

である.前者は6桁で循環,後者は112桁で循環するが,πは無理数なので同じ数字の列が循環することはない.

 1944年,ダルゼルがπと22/7を結びつける積分

  ∫(0,1)x^4(1−x)^4/(1+x^2)dx=22/7−π

という面白い公式を発見した.左辺の表現に対称性が見事である.

  x^4(1−x)^4/(1+x^2)=x^6−4x^5+5x^4−4x^2+4−4/(1+x^2)

  ∫(0,1)(x^6−4x^5+5x^4−4x^2+4)dx=22/7

  ∫(0,1)4/(1+x^2)=π

 さらに,2005年,ルーカスがπと355/113を結びつける積分

  ∫(0,1)x^8(1−x)^8(25+816x^2)/3164(1+x^2)dx=355/113−π

を見つけた.

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 ところで,

  [参]中村滋「円周率,歴史と数理」共立出版

  ∫(0,1)16(x−1)/(x^4−2x^3+4x−4)dx=π

という問題が掲げられている.この問題を紹介したい.

  16(x−1)/(x^4−2x^3+4x−4)

 =4x/(x^2−2)−4x/(x^2−2x+2)+4/(x^2−2x+2)

  ∫4x/(x^2−2)dx=2log(x^2−2)

  ∫4x/(x^2−2x+2)=2log(x^2−2x+2)

  ∫4/(x^2−2x+2)=4arctan(x−1)

なので,

  ∫(0,1)16(x−1)/(x^4−2x^3+4x−4)dx=π

が確かめられる.

 面白いのはこれからである.

  16(x−1)/(x^4−2x^3+4x−4)

 =16(x^5+x^4+2x^3−4)/(x^8−16)

したがって,

  ∫(0,1)16(x^5+x^4+2x^3−4)/(x^8−16)dx=π

であるが,この問題の由来はBBP公式にある.

[1]BBP公式(1997年)

  π=Σ1/16^n{4/(8n+1)−2/(8n+4)−1/(8n+5)−1/(8n+6)}

 コンピュータを使って発見された異色の式である.この公式の不思議な点は円周率を16進法で表すとき,任意の桁(たとえば1000桁目)を直接計算できるるという点である.

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 0<t<1のとき,

  1/(1−t^8)=Σt^8

 また,

  Ik=∫(0,1/√2)t^k-1/(1−t^8)dt

=∫(0,1/√2)Σt^k+8n-1dt

=Σ∫(0,1/√2)Σt^k+8n-1dt

=Σt^k+8n/(k+8n)

=1/2^k/2Σ(1/16^n・1/(8n+k)

 BBP公式は

  Σ1/16^n{4/(8n+1)−2/(8n+4)−1/(8n+5)−1/(8n+6)}

=4√2I1−8I4−4√2I5−8I8

=∫(0,1/√2)(4√2−8t^3−4√2t^4−8t^8)/(1−t^8)dt

=∫(0,1)16(x^5+x^4+2x^3−4)/(x^8−16)dx

=∫(0,1)16(x−1)/(x^4−2x^3+4x−4)dx=π

=π

となるというわけである.

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