■デューラー・ケプラー・ペンローズ(その9)
1891年,ロシアの結晶学者フェドロフは平面のあらゆる周期的タイル貼りが17の対称群のいずれかに属することを証明しました.それでは,非周期的タイル貼りについては何がわかっているのでしょうか?
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【1】非周期的な平面充填
平行移動の周期がない非周期的平面充填については多くの研究がなされています.最初に発見された非周期的タイルの集合は20426個の原型から構成されているものでした(1966年,バーガー).彼はすぐに枚数を104枚に減らしました.
1971年,ロビンソンは6枚のタイルの非周期的組み合わせを発見しました.その後,1974年にイギリスの数理物理学者ペンローズの発見した2種類の菱形を組み合わせて平面を非周期的に敷きつめるものが最も構成要素の少ないものです.
ペンローズタイルと呼ばれるこの敷きつめかたは,正五角形のような5重の対称性がありますが,隙間を生じません.
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【2】黄金菱形多面体による非周期的空間充填
3次元空間の非周期的充填では5種類の黄金平行多面体によるものが知られています.
ケプラーは,すべての面が合同な菱形である菱形多面体は,対角線の比が白銀比になっている菱形を12個組み合わせてできる菱形十二面体と対角線の比が黄金比になっている菱形を30個組み合わせてできる菱形三十面体以外にはないことを証明しようとしたのですが,実はあと2つ,1885年,フェドロフが発見した菱形二十面体と1960年にビリンスキーが発見した菱形十二面体第2種があります.
黄金菱形平行6面体には2種類(太った菱面体とやせた菱面体)あって,細めで尖ったほうがacute ,太めで平たいほうがobtuse と呼ばれていますが,2つずつacute とobtuse が集まれば菱形十二面体(第2種),5つずつ集まれば菱形二十面体,10個ずつ集まれば菱形三十面体となります.このうち,菱形二十面体と菱形三十面体は5重の対称軸をもっています.
これらはコクセターにより,A6(acute),O6(obtuse),B12(Bilinsky),F20(Fedrov),K30(Kepler)と名づけられていて,それぞれ3次元から6次元までの立方体の投影の外殻になっています.すなわち,黄金平行多面体は5種類あり,黄金菱形をある方向に平行移動させたものがA6,O6であり,それをさらに平行移動させるとB12が,続いてF20が,最後にK30が生まれます.
したがって,A6とO6は3次元の,B12は4次元の,F20は5次元の,K30は6次元の立方体とそれぞれ同等になります.また,B12の中には2つずつのA6とO6が,F20の中にはひとつのB12と3つずつのA6とO6が(いいかえればF20の中には5つずつのA6とO6が),K30の中にはひとつのF20と5つずつのA6とO6が(いいかえればK30の中には10個ずつのA6とO6が)それぞれ入っていることになります.
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