■結晶と相転移(その31)
ベキ級数の大切さは,三角関数,指数関数,対数関数など多くのよく知られた関数がベキ級数に展開されることにあります.たとえば,テイラー展開
exp(x)=1+1/1!x+1/2!x^2 +・・・
log(1+x)=x−1/2x^2 +1/3x^3 −1/4x^4 +・・・
sinx=x−1/3!x^3 +1/5!x^5 −・・・
sinhx=x+1/3!x^3 +1/5!x^5 +・・・
cosx=1−1/2!x^2 +1/4!x^4 −・・・
coshx=1+1/2!x^2 +1/4!x^4 +・・・
arctanx=x−1/3x^3 +1/5x^5 −1/7x^7 +・・・
などがその例です.
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【1】イジング模型
イジング自身は強磁性の問題を考えるきっかけとして,1次元の模型を考えた.数学的にやさしく取り扱えそうであるから,ここでも格子点が1次元的に並んでいて,i番目の点にはスピン変数σiの原子(分子)があり,
σi=+1または−1
の2つの値を取る.また,i番目の分子とi+1番目の分子の間には相互作用があり,σi,σi+1がともに+1またはともに−1であれば相互作用のエネルギーは−U,一方が+1他方が−1のときには相互作用のエネルギーは+Uと考えることにする.
エネルギーの和は
E=Σ(−Uσiσi+1)
また,あらゆる可能な状態{・・・,σ-1=±1,σ0=±1,σ=1=±1,・・・}について寄せ集めたものが状態和
Z(T)=Σexp(−E{・・・,σ-1=±1,σ0=±1,σ=1=±1,・・・}/kT)
Z(T)=Σexp(−E{・・・,σ-1=±1,σ0=±1,σ=1=±1,・・・}/kT)
である.
σ0について総和してみる.まず,
σi=+1または−1
であるから,σ^1=1であることを使うと
(σ-1+σ+1)^2=2(1+σ-1σ+1)
(σ-1+σ+1)^4=8(1+σ-1σ+1)
(σ-1+σ+1)^2n=2^2n-1(1+σ-1σ+1)
となるから,U/kT=U’とおくと
Z(T)=Σexp(σ-1+σ+1)σ0U’)=2+(cosh(2U’)−1)(1+σ-1σ+1)=(cosh(2U’)+1)+(cosh(2U’)−1)σ-1σ+1
になる.
以上のことを2次元格子について考えたのが(その1)の結果であるが,超次元こうしについて考えたものがイジング模型というわけである.
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