■結晶と相転移(その11)
1 1 奇数2,偶数0
1 2 1 奇数2,偶数1
1 3 3 1 奇数4,偶数0
1 4 6 4 1 奇数2,偶数3
1 5 10 10 5 1 奇数4,偶数2
1 6 15 20 15 6 1 奇数4,偶数3
パスカルの三角形のn行の奇数と偶数の割合を計算する.n→∞のとき,奇数と偶数の比は0に近づく.(その7)の続き.
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【1】二項係数の偶奇性
[1]n=pのとき,nCmはpの倍数である
両端nC0=nCn=1ですから,両端以外のnCm(1≦m≦n−1)について考えます.n=pのとき
pCm=p!/m!(p−m)!
1≦m≦p−1,1≦p−m≦p−1より,分母は素因数pを含んでいない.よって,pCmはpの倍数である.
[2]n=2^kのとき,nCmは偶数である
(a+b)^2=a^2+{係数が偶数の項}+b^2
{(a+b)^2}^2=a^4+{係数が偶数の項}+b^4
{(a+b)^4}^2=a^8+{係数が偶数の項}+b^8,・・・
数学的帰納法より,nCmは偶数である
[3]n=2^k−1のとき,nCmは奇数である
[2]より,n+1Cmは偶数である.
n+1Cm=nCm-1+nCm
1+nC1=偶数→nC1は奇数
nC1+nC2=偶数→nC2は奇数,・・・
よって,nCmは奇数である.
さらに,nCmがすべては奇数になるのは,n=2^k−1のときに限るというのが冒頭の命題です.実際,他の行には偶数があるのですが,
[4]n=2^kのとき,両端以外のnCm,2^k−1個はすべて偶数である
[5]n=2^k+1のとき,真ん中のnCm,2^k−2個はすべて偶数である
[6]n=2^k+2のとき,真ん中のnCm,2^k−3個はすべて偶数である
>・・・・・・・・・・・・・・・
[7]n=2^k+1−2=2^k+2^k−2のとき,真ん中のnCm,2^k−(2^k−1)=1個はすべて偶数である
[8]nCmがすべては奇数になるのは,n=2^k−1のときだけ
ということになります.
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【まとめ】
nCm(m=0〜n)がすべては奇数になるのは,n=2^k−1のときに限る.さらに,k>1に対してnCm(m=1〜n−1)がkで割り切れるための必要十分条件は,kが素数であって,n=k^mの形に書けるときに限る.
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