■円錐面の輪切り(その52)

 9個の点で交わる2つの3次曲線(cubics)があり,それらの中の6個の点は2次曲線(quadrics)上にあると仮定する.すると残り3個の交点はひとつの直線上にある.パスカルの定理はこれより得られる.

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【1】パップスの定理

 円錐曲線が既約でない場合(2次曲線が2つの直線の和集合である場合)にも成り立つといわけで,これを発見したのもパップスである.パスカルの定理の特別な場合は古代に置いても知られていたと言うわけである.

 パップスの定理「直線上に3点A,B,C,もう一つの直線上に3点A’,B’,C’をとる.AB’とA’Bの交点をP,BC’とB’Cの交点をQ,AC’とA’Cの交点をRとするとき,P,Q,Rは同一直線上にある.」

 すなわち,2直線上にすべての頂点がのっている6角形の反対側の位置にある辺同士の交点は同一直線上にあるというのが,射影幾何学におけるパップスの定理である.

 直線は無限半径をもつ円であるが,2本の直線からなる退化した円錐曲線を考えれば容易にこの定理にたどりつくであろう.パップスの定理はパスカルが2次曲線について発見した定理の特別な場合になっているので,パスカル・パップスの定理ともいわれる.

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【2】パスカルの定理

 通常,パスカルの定理は次のように述べられる.

「円錐曲線すなわち楕円,双曲線,放物線に内接する任意の六角形の三組の対辺の交点は同一直線上にある.」

 パスカルの定理はパップスの定理の一般化になっている.楕円を限りなく大きくすると,楕円は2直線になるからである.

 パスカルの定理の逆は「6角形の向かい合っている3辺の3組の交点が一直線上にあるとする.このとき,6角形の頂点は1つの2次曲線上にある.」

 パスカルの定理から150年以上たって,その双対にある共点定理「円錐曲線の外接する6辺形の対角線は1点で交わる」が発見されたのですが,それがブリアンションの定理です.

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【3】ケイリ−・バカラックの定理/M.ネーターの定理

 パスカルの定理自体もより一般的な定理の特別な場合である.その定理は3次曲線に関するもので,たとえば,楕円曲線が群構造をもつことはケイリ−・バカラックの定理やM.ネーターの定理をもとに説明される.

 2つの3次曲線は9個の異なる点で交わり,別の3次曲線がこれらの交点の8個を含んでいるならば,それは9個すべての点を含む.これはケイリ−・バカラックの定理の特別な場合で,冒頭の「9個の点で交わる2つの3次曲線(cubics)があり,それらの中の6個の点は2次曲線(quadrics)上にあると仮定する.すると残り3個の交点はひとつの直線上にある.」も導くことができる.パスカルの定理はこれより得られる.

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