■空間充填多面体の求積(その1)

 デルタ多面体に対して,正方形面のみによる凸多面体は立方体,正五角形面のみによる凸多面体は正十二面体しかない.正六角形面のみによる凸多面体はもはや存在しない.しかし,正多角形面のみからなる多面体はプラトン立体,アルキメデス立体,アルキメデスの角柱と反角柱を除いて92種類あることをジョンソンとザルガラーは報告している(ミラーの多面体とデルタ多面体のうち,正多面体以外のものも含まれる).

横浜桐蔭学園の富永正治先生とのやり取りである

T:生徒に与えた課題で中高数学でジョンソン多面体の体積も求めるという問題があります。サッカーボールの体積もあります。

S:私自身はJ91の体積を求めさせる問題に興味があるのですが、高校生には難しいでしょうか?

T:J91は正5形の対角線を含む直方体と12面体などにある屋根と同じ様な形の組み込みなので高校生で計算できます。発展性のある形で、座標系がきれいなのでベクトルでもできます。外積計算なのでやや高校数学を超えてます。値はネットでもでています。

S:わたしは角錐分解などによらず全く別の方法で求積しました。 ・・・

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中川宏さんはジョンソン・ザルガラー多面体N91が加わった空間充填を発見した.N91は重月形重回転体として知られており,菱形12面体と同じ2回回転対称性をもっている.これはこれでなかなか趣きのある多面体である.ジョンソン・ザルガラー多面体のなかで一番美しいといってよいかもしれない. どことなくβ14面体に似ているということで,中川さんが積み木をしてみたところ,N91の正三角形面を合わせるように繋いでいくと,立方体と正十二面体の隙間が現れる.すなわち,N91・立方体・正十二面体の3種類の立体で空間充填することが可能であることがわかった.新発見であると思われるが,中川さんの遊びの中で予想外のことが起こったのである.

正方形と正五角形と10角形のパターンを中川パターンと呼ぶことにするが、中川パターンでは,すべての正五角形が3つの正方形と隣り合い,すべての正方形が2つの正五角形と隣り合い,すべての10角形が6枚の正五角形と6枚の正方形に囲まれている.それに相当する空間版が正十二面体同士の隙間をN91と立方体で充填することだと考えられるのである.

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