■剰余系と整数生成定規(その66)
[Q]aグラムとbグラムのおもりがたくさんあるとき,どんな重さを計ることができるのだろうか?
この問題の解はよく知られていて,(その65)では以下ようなの解を与えたが,今回のコラムでは証明を与えてみたい.
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【1】解
[A]d=gcd(a,b)とすると
[1]ax+by=dは整数解をもつ.
[2]ax+by=nが整数解をもつならな,nはdの倍数である.
すなわち,計れる重さの最小数が最大公約数であって,その倍数全体を計ることができるのである,ただし,おもりの選び方は1通りでないことに注意.たとえば,a=22,b=15の場合,
6=22×(−12)+15×18=22×3+15×(−4)
一般に1組の特殊解を(x0,y0)とすると,一般解は
x=x0−bt/d,y=y0+at/d
で与えられる.もし,使用するおもりの数を最小にしたいならば,
|x{+|y|=|x0−bt/d|+|y0+at/d|
の最小値を求めればよい.
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【2】証明
ax+byをdで割ったときの余りは,ax’+by’の形をしていて,しかもdよりも小さいのであるから,0でなければならない.ゆえにdはすべてのax+byの形の数の約数である.とくに,dはa=a・1+b/0およびb=a・0+b・1の公約数である.一方,dはxa,bの任意の公約数で割り切れる.ゆえにd=(a,b).
また,amx+bmyという形で最小の正の数はamx0+bmy0で,(a/d)x+(b/d)yの形で最小の正の数は(a/d)x0+(b/d)y0である.
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【3】結果の拡張
これらの結果の拡張は容易で,
[Q]aグラムとbグラムとcグラムのおもりがたくさんあるとき,どんな重さを計ることができるのだろうか?
という問題では
[A]d=gcd(a,b,c)とすると
[1]ax+by+cz=dは整数解をもつ.
[2]ax+by+cz=nが整数解をもつならな,nはdの倍数である.
すなわち,2種類のおもりの場合と同様の結果が成立する.
さらに,d=ax+by,d=ax+by+czのみならず,
d=ax+by+・・・+fu
の形の数に対しても一般化することができる.
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[参]天秤の問題では,
1,3,3^2,3^3,3^4,・・・,3^r
のおもりによって,1から(3^(r+1)−1)/2グラムまでのすべての整数の重さを量ることができ,しかもそれが唯一の方法であるという.
一般に,母関数に関する美しい恒等式
Π(1+x^(3^n)+x^-(3^n))=Σx^n
が成り立つ.
ここでは,an,an-1,・・・,a1,a0が互いに独立に−1,0,1を動くとき,
P=3^nan+3^n-1an-1+・・・+3a1+a0
によって,(2H+1)個の数
−H,・・・,−1,0,1,・・・,H
(H=3^n+1−1)/(3−1))
が一意に表示されることを証明する.
(A)P=3^nan+3^n-1an-1+・・・+3a1+a0に
H=3^n+3^n-1+・・・+3+1
を加えれば,an,an-1,・・・,a1,a0に0,1,2という値をとらせたときの数,すなわち,0,1,・・・,2Hのすべてが得られる.
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