■ゼータ関数の対称性(その2)
【2】ガンマ関数からの補足
関数等式はきわめて簡潔に書かれているので,そういうふうに「解析接続」されているといってしまえばそれまでですが,しかし,このように定義されても私はどうしてもつかえてしまうのです.おおかたの人にとってもまったくわからないあるいはもう一つピンとこないほうが普通なのではないでしょうか. 私のように物わかりの悪い者は世の中にそうたくさんはいないと思いますが,私の素朴な疑問も何らかの役に立つかもしれないので,冗長ですが以下の話におつきあい下さい.
Γ(x)=∫(0,∞)t^(x-1)exp(-t)dt x>0
無限積分Γ(x)をxの関数とみてガンマ関数といいます.
Γ(1)=∫(0,∞)exp(-t)dt=1
Γ(1/2)=∫(0,∞)t^(-1/2)exp(-t)dt
ここで,t=u^2とおくと∫(0,∞)exp(-u^2/2)du=√π/2(ガウス積分)より
Γ(1/2)=√π
が得られます.
オイラーの第2積分とも呼ばれるガンマ関数Γ(x)には,Γ(x+1)=xΓ(x)の関係があり,次のような漸化式が成り立ちます.
Γ(x+1)=xΓ(x)=x(x-1)Γ(x-1)=・・・・
したがって,xが正の整数nのときにはΓ(n+1)=n!が成り立ち,ガンマ関数は階乗の一般形となっていることがわかります.
また,半整数のときには,Γ(n+1/2)=(2n)!√π/{2^(2n)n!}です.なお,ガンマ関数Γ(x)はx>0について微分可能で,x=1.4616321449・・・で最小となります.
ガンマ関数の定義をx<0の領域にも拡張することができます.すなわち
-1<x<0のとき,Γ(x)=Γ(x+1)/x
-2<x<-1のとき,Γ(x)=Γ(x+2)/x(x+1)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
-n<x<-n+1のとき,Γ(x)=Γ(x+n)/x(x+1)・・・(x+n-1)
このようにして0<x<1(あるいは長さ1の任意の区間)でのガンマ関数の値から,すべての実数点におけるガンマ関数の値が計算できます.負の半整数値の例として
Γ(-1/2)=-2√π
Γ(-3/2)=4/3√π
Γ(-n+1/2)=(-1)^n{2^(2n)n!}√π/(2n)!
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複素数の領域への拡張は
Γ(s)=∫(0,∞)t^(s-1)exp(-t)dt
で与えられます.
t^(s-1)=t^(-1+u)cos(vlogt)+it^(-1+u)sin(vlogt)
より
Γ(s)=∫(0,∞)t^(-1+u)cos(vlogt)exp(-t)dt+i∫(0,∞)t^(-1+u)sin(vlogt)exp(-t)dt
Γ(s)=f(u,v)+ig(u,v)
とおくと
f(u,v)=∫(0,∞)t^(-1+u)cos(vlogt)exp(-t)dt
g(u,v)=∫(0,∞)t^(-1+u)sin(vlogt)exp(-t)dt
t>0なので被積分関数の実部,虚部ともにtで積分可能な関数となります.そして,Re(s)>0のときΓ(s)は絶対収束しますが,Re(s)<0に対しては
Γ(s)=Γ(s+1)/s
が成り立つように延長してやることによって複素全平面に解析接続できます.
また,その極はs=0,−1,−2,−3,・・・のみで零点は存在しません.このことから直ちにわかることは,関数等式
ζ(s)=π^(s-1/2)Γ((1-s)/2)/Γ(s/2)ζ(1-s)
の右辺の2つのガンマ関数の商の部分はs=0,−2,−4,−6,・・・に零点をもつということです.s=−2,−4,−6,・・・はゼータ関数の自明な零点となるのですが,点s=0だけはζ(1-s)が極となるため零点ではありません.
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