■2^m〜3^n(その2)

【2】バッハの12平均律

 現在使われている音階はピタゴラスの音階を改良した12平均律音階です.ピアノやオルガンのような鍵盤楽器では1オクターブの間を12の音に分けていますが,転調のために平均律,すなわち,1オクターブの音程を対数目盛を用いて12等分しています.

 バッハによってその基礎が作られたのですが,12平均律音階では半音上がるごとに振動数が2^1/12倍になります.

  r=2^1/12=1.059463094

としてf(x)=1,r,r^2,・・・,r^11,2=2^xですが,rは無理数ですから,ピタゴラス音階のように整数比で表すことはできません.

 ビンセンツォ・ガリレイ(ガリレオ・ガリレイの父)は

  18/17=1.0582・・・

で近似しました.また,メルセンヌは

  (2/(3−√3))^1/4=1.05973・・・

で近似しました.この式は平方根だけを含む式なので幾何学的に作図できる方法になっています.

 しかし,現実に楽器の設計に応用するのは難しく,カリレイの近似値より正確で,メルセンヌのものより使いやすいものが必要になりました.1743年,職人のシュトレーレは数学的訓練を積んでいませんでしたが,平均律関数の単純で実用的な近似式

 (24+10x)/(24−7x)

を与えました.

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[補]シュトレーレは数学的な訓練を受けていなかったので,彼がどのようにしてこの近似式を発見したのかは謎のままである.おそらく職人的な直観によるものと思われるが,あまり正確ではないと誤って評価されてしまった.この誤った評価は1957年にバーバーがその誤りを発見するまで続いた.

  f(1/2)=L(1/2)=√2=1.141421

であるが,シュトレーレの近似式では

  58/41=1.41463

 バーバーはシュトレーレの近似式が正確な理由を,この式が非常に正確なのは平均律関数の分数関数近似(近似理論)と√2のディオファントス近似(数論)という2つのよい近似を効率的に組み合わせているからと結論した.

 バーバーの数学的発見のおかげでシュトレーレの名誉回復がなされた.それにしてもシュトレーレはいったいどうやって近似式を思いついたのだろうか?

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