■整域(その12)

【2】ユークリッドの互除法

ユークリッド整域とは,ある数体系内で,除法

  α=β・γ+δ,|δ|<|β|

は可能かという問題です.複素数版のユークリッドの互除法でも割り算の余りδが|δ|<|β|として表現されれば,アルゴリズムが定義できます.ここでは,Z(√−d)整数の体系内で,除法

  α=β・γ+δ,|δ|<|β|

は可能かというユークリッド整域の問題を考えてみます.

Q(√−d)の部分集合Z(√−d)は

  Z(√−d)={a+b√−d|a,bは整数}

で定義されます.Z(√−d)は複素平面内で幅1×高さ√dの直交格子を形成しますから,β^-1αに最も近いZ(√−d)の整数γが1未満にあるためには,

l^2=(√d/2)^2+(1/2)^2

  d=1のとき,√2/2<1(ユークリッド整域)ガウス整数環

  d=2のとき,√3/2<1(ユークリッド整域)

d≧3のときユークリッド整域でないことが幾何学的に証明されます.

Z(√−3)はユークリッド整域ではありませんが,それではZ((−1+√−d)/2)はどうでしょうか?  これは複素平面内で斜交格子を形成し,その菱形の4頂点は

(0,√−d,(1+√−d)/2,(−1+√−d)/2)

β^-1αに最も近いZ(√−d)の整数γが1未満にあるためには, 

l^2=(√d/2−l)^2+(1/2)^2

  −l√d+(d+1)/4=0

  l=(d+1)/4√d

  d=3のとき,1/√3<1(ユークリッド整域)アイゼンシュタイン整数環

  d=7のとき,2/√7<1(ユークリッド整域)

  d=11のとき,3/√11<1(ユークリッド整域)

以上より,Z(√−d)の整数環がユークリッド整域となるのは,

  d=1,2,3,7,11

の5つの場合に限ります.ユークリッド整域→一意性整域が成り立つは真ですが,逆は成り立ちません.一意分解性をもつが,ユークリッド整域ではないもの(単項イデアル整域)は,

  d=19,43,67,163

に対応するものです.

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斜交格子の4頂点は

(0,√−d,(1+√−d)/2,(−1+√−d)/2)

d>1であるから縦長菱形

この菱形の内部の点で、格子点から最も離れた点を求めることになる

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