■y^2=x^3−aの整数解(その5)

  x座標もy座標も整数である点を整数点,座標x,yがともに有理数であるような点を有理点といいます.指数曲線:y=exp(x)は座標(0,1)を通りますが,点(0,1)がこの滑らかな曲線上の唯一の整数点・有理点であって,それ以外のどの有理点にもぶつからないのは驚くべきことです.同様に,xが0以外の有理数のとき,y=tanxは有理数の値をとることはできません.

 ところで,楕円曲線:y^2 =x^3 +1には無限に多くの整数点があるでしょうか,あるいは一つでも整数点はあるでしょうか.実は,これには整数点は(2,±3),(0,±1),(−1,0)の5つしかありません.また,この楕円曲線には有理点もやはりこの5つしかないのです.また,y^2 =x^3 −2は(3,±5)以外の整数点をもちませんが,無数に有理点が得られます.

 一般に,y^2 =x^3 −aには有限個の整数解しかないのですが,たとえば,a=−7に対しては1つも整数解がありません.また,a≠−1,432ならば曲線上には無限個の有理点があることがわかっています. 少し挑戦してみると分かるのですが、これらを証明するのはほとんど不可能に見えるほど難しい問題です。楕円曲線上に有理点が無限個のっていたり、有限個であったり、あるい全くなかったりすることは図をいくらにらんでもわからない問題ですが、ここではこれ以上は追求しないでおきましょう。

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【補】楕円曲線とフェルマーの定理

 ワイエルシュトラス形式の特異点は有理点であり,曲線上に特異点があれば,適当なパラメータmによりx,yはmの多項式として表されます.そして,xとyがmの有理式として表されるとき,有理曲線となり,2次曲線とよく似た性質をもちます.

 一方,特異点がなければ,楕円曲線と呼ばれる非有理曲線で2次曲線とは本質的に異なってきます.2次曲線はすべて有理曲線ですが,3次曲線が異なる3根をもつ有理係数の多項式の場合は,有理勾配の方法によるパラメトライズは有効には働きません.すなわち,楕円曲線は有理曲線でないため有理関数で表わすことはできませんが,楕円関数でパラメトライズすることは可能です.

 ところで,フェルマーの最終定理『x^n+y^n=z^nでn≧3のとき,x,y,zは正の整数解をもたない.』を解くことは,2変数n次多項式f(x,y)=x^n+y^n−1=0に,有理数解があるか,すなわち有理点をもつかどうかを考える問題に対応します.

 1970年代,フェルマーの問題を征するために必要となるのが楕円曲線であることが明らかになりました.楕円曲線には,楕円曲線と三点で交わる直線で,そのうちの二つの交点の座標がわかれば他の一点の座標も計算でき,二つの点の座標が有理数ならば,他の一点の座標も有理数であるなどの性質をもっています.

 a^p+b^p=c^pを満たすような楕円曲線:

  y^2=x(x+a^p)(x−b^p)

が保型関数によってパラメトライズできないことの証明がフェルマーの最終定理の証明に繋がるのですが,これ以上はかなりこみいった話になるので追求しないでおきましょう.(楕円曲線の有理点の有無ではなく,楕円曲線そのものが存在しないことを示すのである.)

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【6】フェルマー方程式(2元n次形式)

 フェルマー方程式:

  x^n+y^n=z^n   (n≧3)

が整数解をもたないことについては,フェルマー(n=4),オイラー(n=3,1770年),ルジャンドルとディリクレ(n=5,1825年),ラメ(n=7,1839年),クンマー(正則素数),ソフィー・ジェルマン(ソフィー・ジェルマン素数,1823年),ヴィーフェリッヒ(2^(p-1)=1 (mod p^2)を満たさない素数,1909年)などの証明があります.

 モーデル・ファルティングスの定理(1983年)とは,「種数が2以上の代数曲線は有理点を有限個しかもたない.」というものです.これはn≧4に対し,フェルマー方程式x^n+y^n=z^nの整数解は有限個しか存在しないという定理を特別な場合として含んでいます.

 2次曲線のように有理点全体を1つの変数でパラメータ表示できる曲線を種数が0の曲線と呼んでいます.一方,種数が1である曲線に楕円曲線があります.したがって,有理点が無数にあるような曲線は種数が0か1ということになり,直線(種数0)か,円錐曲線(種数0)か,楕円曲線(種数1)に限られてきます.

 また,リーマン・フルヴィッツの公式よりフェルマー曲線x^n+y^n=1は種数が(n−1)(n−2)/2で,これはn=3のとき1ですが,n≧4のときは2以上となりますから,そこでフェルマーの予想を征するために必要となるのが楕円曲線であったというわけです.

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