■対蹠点までの距離(その348)

 2次元の正多角形はその辺数pで,3次元の正多面体は面の辺数pと各頂点に会する面の個数qをペアにしたシュレーフリ記号(p,q)で表されます.それと同様に,n次元正多胞体ではシュレーフリ記号を一般化して,n−1次元超平面(p1,p2,・・・,pn-2)が3次元低い構成要素上にpn-1個ずつ会する,

  (p1,p2,・・・,pn-2,pn-1)

で表現されます.

 たとえば,

  n次元正単体は(3,3,・・・,3,3),

  双対立方体は(3,3,・・・,3,4),

  超立方体は(4,3,・・・,3,3)

と表されます.これを逆順にした(pn-1,pn-2,・・・,p1)で表される正多胞体が双対正多胞体です.ここで,

  ck=cos(π/pk)

とおきます.

 また,n次元単位単体Δ=onon-1・・・o1o0を定め,1点から各面(超平面)までの距離を(x0,x1,・・・,xn)とします.(x0,x1,・・・,xn)は2次元の三線座標のn次元版です.

 すると,定数c0,c1,・・・,cnについて

  c0x0+c1x1+・・・+cnxn=1

が成立します.さらに,各面(超平面)の単位法線ベクトルをekとすると,n+1本のベクトル間には

  c0e0+c1e1+・・・+cnen=0   (ゼロベクトル)

なる1次関係があります.

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 ここで,基本行列

    [0,c1 ,0,・・・・・・・・・,0]

    [c1 ,0,c2 ,0,・・・・・・,0]

  C=[0,c2 ,0,c3 ,0,・・・・,0]

    [・・・・・・・・・・・・・・・・・・]

    [0・・・・・・・・・・・,0,cn-1 ]

    [0,・・・・・・・・・0,cn-1 ,0]

を作り,固有方程式

  Pn(λ)=det|λI−C|=0

からその固有ベクトル(1次変換によって同じ方向に写るベクトル)と固有値λ(その拡大率)を求めるのですが,これを解くとCの固有ベクトルが基本単体の超平面に関する反転列R1・・・Rnによって不変なベクトルとなります.(頂点okに対する超平面Πkに関する反転を便宜上番号をずらせてRk+1としています.)

 また,三重対角行列となることから,漸化式

  Pn+1(λ)=λPn(λ)−cn^2Pn-1(λ)

  P1(λ)=λ,P2(λ)=λ^2−c1^2

を得ることができます.

 空間充填形の固有値についてはλ=±1となるのですが,正多面体については|λ|<1で

  λ=cosξ,ξはπと有理比

と書くことができます.その際,最大固有値が重要なのですが,最大固有値をとるξ(の最小値)はペトリー数hを用いてπ/hで表されます.

  λmax=cos(π/h)

 ペトリー数とは,反転が何回でもとに戻るかという鏡像変換に関係した基本量で,基本単体の数をgとすると,3次元正多面体では

  g/h=(h+2)=24/(10−p−q)

4次元正多胞体の場合は

  g/h=64/(12−p−2q−r+4/p+q/4)

で表されます.

 基本単体の超平面に関する反転列R1・・・Rnによって全周の1/hだけ回転するのですが,nが奇数ならばこれに反転が加わり,nが偶数ならば本来の回転となります.そして(R1・・・Rn)^(h/2)は中心に対する反転となるのです.

 なお,正n角形にはn本の対称軸がありますが,正多面体の対称面の個数は?n次元の正多胞体に対称超平面は合計何枚あるのか?という問題の答は,nを次元数,hをペトリー数として

  m=nh/2

枚で与えられます.正多角形の対称軸の数m=2n/2において,分子の2は平面の次元数と解釈できます.また,3次元正多面体の対称面はm=3h/2個ですが,3は次元数です.

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