■対蹠点までの距離(その347)

【3】基本単体に関する反転によって生成される群

 結論を先にいってしまいましたが,とはいっても,これには大変な手間がかかります.その理由はn(≧4)次元図形になると計算に頼らざるをえず,例外型のルート系を漏れなく調べるのが大変になるからです.以下には考え方の基本になる一般論をいささか天下り的に与えておきます.

 n次元空間の正多胞体とは「n個の超平面に囲まれ,全体の中心onから各頂点o0,各辺の中点o1,各面の中心o2,・・・,各超辺の中心on-2,各超平面の中心on-1までの距離がそれぞれ相等しく,そのm次元成分はすべてm次元の正多胞体である」と定義されます.

 このとき,onon-1・・・o1o0を結んだn次元単体を「基本単体」と呼びます.o0o1,o1o2,・・・,on-1onは互いに直交するので,n次元正多胞体の諸量を計算するための基本となっています.基本単体は万華鏡のように隣同士が互いに鏡像形で,半分ずつが互いに合同です.

 基本単体の個数gは正多胞体にとって最も大切な基本量です.基本単体は隣同士が鏡像形であり,半分ずつが互いに合同であることより,3次元正多面体の基本単体の個数は

  g=2pf=2qv=4e

すなわち,正多面体の辺の個数eの4倍と等しくなります.この基本領域は超球面上,または,ユークリッド空間内の単体になるのですが,それに応じて有限群(正多面体)か離散無限群(空間充填形)になります.

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 aを行ベクトル,xを列ベクトルとして

  a=(a1,・・・,an)

  x’=(x1,・・・,xn)

実数をcとおくと,n次元ユークリッド空間の超平面は,

  ax’=c

で表すことができます.原点を通るときc=0です.

 ベクトルaを超平面の法線ベクトルと呼びます.法線ベクトルはスカラー倍を除いて一意に定まります.aをその長さ‖a‖で割ったベクトルa/‖a‖を考えると,これは長さ1の単位法線ベクトルとなります.

 また,aが単位法線ベクトル,すなわち,

  a1^2+a2^2+・・・+an^2=1

が成り立つとき,cは原点から超平面へ引いた垂線の(符号のついた)長さとなります.

 n=1なら方程式はax=bですから,超平面は点にほかなりません.n=2ならax+by=cとなり,超平面は直線,n=3ならax+by+cz=dですから,超平面は平面を表します.3次元空間内の超平面が普通の平面だし,2次元空間内の超平面は直線ですから,n次元空間の場合,n−1次元の線形多様体を超平面というのです.

 超平面<a,x>=0に対するbの反転像をb’とすると,b−b’はaに平行であり,

  b−b’=2<b,a>/<a,a>

なる関係式が成立します.

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