■直観幾何学研究会2024(その49)

【8】代数的可解性の判定(ガロア)

 

 5次以上の一般代数方程式は代数的に解けないことがアーベルによって証明されたわけですが,根の公式がないからといって数値解法以外に手段がないわけではありません.

 

 たとえば,x^5−1=0は,

  (x−1)(x^4+x^3+x^2+x+1)=0

と因数分解されますから代数的に解けますが,それに対して,

  x^5−80x−5=0

は代数的には解けない方程式です.

 

 いかなる条件の下で方程式は解きうるか?...このように,具体的に係数が与えられた方程式の代数的可解性を判定する問題が残っていたのです.

 

 n次の円分方程式:

  x^n−1=0

は何次でも代数的に解けることがガウスによって証明されたのですが,ガウスは,この考察から正17角形の作図可能性をも発見しました.2次方程式の解ならコンパスと定規で作図可能なのですが,16次方程式:

  x^16+x^15+・・・+x+1=0

は2次方程式に分かれてしまうので,正17角形は作図可能なのです.また,ガウスはレムニスケート(連珠形)の等分問題から楕円関数を発見しています.言い替えれば,方程式論には楕円関数論という背景があったのです.

 

 アーベルは,これらに刺激されガウスの結果の一般化を試みますが,肺結核に倒れ,一般的な代数的可解性の判定法の発見するという夢は果たすことができませんでした.そして,代数的可解性の判定はガウス,アーベルの跡を追ったガロアが,方程式の群に正規部分群の概念を導入することによって完成されるのです.

 

 ガロアは,方程式の根の入れ替え全体が表す対称性を群と名づけました.そして群をみれば,その方程式が四則演算とベキ乗根で解けるかどうか判定できてしまうというのが「ガロア理論」です.ガロアはアーベルの研究成果を高く評価しており,アーベルを超える成果をあげたのですが,もっとも,その説明は素人の手に余るのでこれ以上詳しく書くことができませんし,書いたとしても本一冊分にもなってしまいます.

 

 お断りしておきますが,私自身は本業のかたわら趣味で数学に取り組んでいるアマチュア数学愛好家であり,大した天分もなく数学的素養さえおぼつきません.そのため,詳細には立ち入らないことにしますが,「ガロアの理論」(矢ヶ部巌,現代数学社)などを参考にして,そこに潜んでいる底知れぬおもしろさを追体験して頂けたならば幸甚です.

 

 ともあれ,ガロアの成果は式から群へと考察の視点を移した画期的なもので,数学に一大転機をもたらし,現代数学の夜明けを告げるものとなったということです.肺結核に侵され不幸にして夭折した天才アーベル,そして当時の数学界に受け入れられなかった悲劇の天才ガロアはわずか20才の1832年に決闘にたおれたことはあまりにも有名な悲話になっています.

 

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