■色のない虹(その2)

 雨が降った後に空に輝く七色の虹は,昔から人々の関心を惹いてきた自然現象である.虹がなぜできるか考察することはギリシア時代から行われ,アリストテレスが太陽の反対側にある水滴が源であることを発見した.

 

 虹に対する科学的な説明は,デカルトの幾何光学によってなされた.幾何光学とは,光は一様な物質のなかでは直進し,障害物にあたると反射するというように,まるで光が粒子のように動くとして,光の伝播を説明するものである.この考え方は光を波動とみるホイヘンスの考え方とは大変異なるものであるが,屈折,反射など光学に関わる多くの伝播現象をよく説明できる.

 

 デカルトは虹が水滴の内部で反射してできること,反射の仕方によって主虹と副虹が見えることを,歴史上初めて科学的に説明したものである.

 

 また,ニュートンは1666年当時まだ24才の青年であったが,この年,<光の分散>という大発見,すなわち,太陽光線がガラスのプリズムを通ると屈折率の差によって赤から紫に至るたくさんの成分に分けられることを発見した.太陽光線は一見白色であるが,異なった光の混合物であるということは小学校の理科の教科書にも取り上げられていて,現在一般に広く認められている.

 

 ニュートン以前には白色光こそが基本的なものと考えられていたから,そういう意味で,ニュートンの発見は従来の仮説を根底から覆す画期的なものであったと思われる.とくに目立った色だけあげて虹の7色:赤(red),橙(orange),黄(yellow),緑(green),青(blue),藍(indigo),紫(violet)というが,これらの色には相互にはっきりしたしきりがあるのではなく,連続的に変化する無数の異なった色からなっている.

 

 このようにして生じた美しい光の帯にニュートンはスペクトルという名称を与え,虹の色を初めて科学的に説明した.「7色の虹」と呼ばれるが,この知識の源泉はニュートンに拠っているのである.

===================================