■もうひとつの虹(その10)

【3】虹の波動理論

 前節では水滴の中を通る光線の道筋(光線に関するは幾何光学的理論)を用いれば虹の性質のほとんどを理解することができることを述べたが,エアリ−は,光の波動理論(回折)の考え方に従って過剰虹を説明しようとした.

 エアリーは回折に関する一般的な理論の仮定を用いて,焦線の近傍で光の強度(振幅分布)を計算した.結果だけを述べると,虹の光の振幅は,エアリー関数

  Ai(x)=∫(0,∞)cos{π/2(t^3−xt)}dt

で記述される.光の強度はこの積分関数を2乗したものになる.

 ここで,パラメータxは

  x=(2ka/π)^2/3(sin^3θ/cosθ)^1/3

  k:光の波数,a:水滴の半径,θ:虹光線からの角度

であるから,xは焦線からの距離と焦線の曲率に依存する定数である.本質的には焦線からの距離を表し,x=0のときがちょうど焦線のところで,デカルトの幾何光学に対応する.エアリー関数はx>0では指数関数的に減少し,x<0では正弦関数のように振動する関数である.

 エアリー積分を使えば,光線の干渉によって生じる過剰虹のできる場所や強さを予測することができる.光が最も強くなるのはデカルトの理論よりも少し内側にくることがわかるし,また,三角関数のように繰り返し極大値をとるので,それが過剰虹を与えるというわけである.

 一方,アレクサンダー暗帯でも,光の強度が完全に0というわけではなく,わずかながら光が漏れてくることもわかる.また,水滴が小さくなると焦線の曲率は大きくなって,虹のできる角度もより大きくなる理由も説明される.

 1836年,エアリーはこのようにしてアレクサンダー暗帯の存在と過剰虹発生とを説明した.過剰虹がなぜ見えるかという問題に答えるには,幾何光学だけでは定まらず,本質的には光の波動理論を必要としたのである.

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