■もうひとつの虹(その4)

[1]幾何光学的理論

 

 主虹では外側から内側に赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の順に見え,その外側に,色の配列が主虹と逆順の副虹がうすく見える.主虹は水滴の中で1回反射した虹,副虹は2回反射の虹である.主虹と副虹の間が,アレクサンダー暗帯である.デカルト・ニュートンの虹の古典論によると,ここに反射してくる光はまったくない.

 

 このことを幾何光学的に調べることにしよう.水滴の半径を1,屈折率をn,入射光線と水滴の中心との距離をa,反射光線と入射光線の間の角度(虹角)をθとすると,平面幾何学的に,1回反射の虹では

  θ=4arcsin(a/n)−2arcsin(a)

2回反射の虹では

  θ=−4arcsin(a/n)+2arcsin(a)+π

となることが示される.

 

 一般に,奇数回反射した場合は

  θ=2(r+1)arcsin(a/n)−2arcsin(a)

偶数回反射した場合は

  θ=−2(r+1)arcsin(a/n)+2arcsin(a)+π となる.

 

 散乱角θをaで微分すると

  a=√(4−n^2)/3   (主虹)

  a=√(9−n^2)/8   (副虹)

でθは最大になる.

 

 n=4/3とおくと,主虹はa=0.86で最大値42°,副虹はa=0.95で最大値51°をとるが,どちらからの散乱光もまったくやってこない領域が主虹と副虹の間で,この領域がアレクサンダー暗帯である.

 

 また,もっと丁寧に考察するならば,

  dθ/da=2(−3a^2−n^2+4)/√(n^2−a^2)√(1−a^22(√(n^2−a^2)+√(1−a^2))

より,n>2の場合にはdθ/da<0より包絡線が存在しないので,主虹は存在しないことも理解される.

 

 水(屈折率≒4/3)であっても,ガラス(屈折率≒3/2)であっても虹はできるのであるが,反射する球体の屈折率が2以上の場合,たとえばダイヤモンド(屈折率=2.42)の場合,虹のできる様子は水滴の場合とはかなり異なってくる.どのような透明体であっても差し支えないわけではなく,水の屈折率が1.3程度であったおかげで,われわれは美しい虹を見ることができるのである.

 

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