■四色問題(その22)

 球を六角形でタイル貼りすることができないこと以上に驚くべきことがある.もし球を5角形と六角形からなる地図で敷き詰めたならば,サッカーボールのようにちょうど12個の5角形がなければならないというものである.

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(Q)五角形と六角形からなる多面体には五角形が常に12個ある.

(A)n本の辺をもつfn枚の面とn本の辺が交わるvn個の頂点をもつ凸多面体について,

  F=f3+f4+f5+・・・

  2E=3f3+4f4+5f5+・・・

  6F−2E≧12

に代入すると

  3f3+2f4+f5−f7−2f8−3f9−・・・≧12

 地図のように2つの辺に囲まれた領域まで許すことにすると,この数え上げ公式は

  4f2+3f3+2f4+f5−f7−2f8−3f9−・・・=12

となり,係数が1ずつ小さくなり,それが0となるf6は式中に現れない.

 このことからもf3,f4,f5の少なくとも1つは0でない→多面体には3角形か4角形面か5角形面が少なくとも1つなければならない,同様に,多面体の少なくとも1つの頂点は3次か4次か5次でなければならない→すべての頂点の次数が6以上となることは不可能であり,必ず次数が5以下の頂点をもつことが導き出される.これもオイラーが知っていた結果であるということである.

 ここで,

(1)f2=f3=f4=0だとすると,少なくとも12個のf5がなければならないことになる(フラーレン).

(2)多面体の面がすべてf5とf6であるならば,f5=12(切頂二十面体など)

(3)多面体の面がすべてf4とf6であるならば,f4=6(切頂八面体など)

(4)多面体の面がすべてf4,f6,f8であるならば,f4=f8+6(大菱形立方八面体など)

(5)多面体の面がすべてf3とf6であるならば,f3=4(切頂四面体など)

 すなわち,球面を六角形と三角形で覆うとしたら,ちょうど4個の三角形が必要である.一般に,球面を六角形とn角形で覆うとしたら,ちょうどk=12/(6−n)個のn角形が必要である.n=3,4,5のとき,

  k=12/(6−n)=4,6,12

であるが,これは正多面体の面数と同じである.これらの結果は極めて重要で,四色定理の証明の中核をなしている.

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[補]もし五角形x枚と六角形y枚の2種類の面のみをもつ頂点の次数が3の凸多面体に限定して考えるならば

  面:x+y

  辺:(5x+6y)/2

  頂点:(5x+6y)/3

  v−e+f=2  (オイラーの多面体定理)に代入すると,x/6=2よりx=12となる.

[補]もしm角形x枚とn角形y枚の2種類の面のみをもつ頂点の次数がkで等しい頂点数24の準正多面体に限定して考えるならば

  面:x+y

  辺:(mx+ny)/2

  頂点:(mx+ny)/k=24

  v−e+f=2  (オイラーの多面体定理)に代入すると,x+y=12k−22となる.

  k=3 → 切頂立方体,切頂八面体,正12角柱

  k=4 → 小菱形立方八面体,ミラーの立体,正12反角柱

  k=5 → ねじれ立方体

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【4】彩色数とヒーウッドの公式

  H(g)=[{7+√(1+48g)}/2]

と同値な

  H(χ)=[{7+√(49−24χ)}/2]

を紹介します.オイラー標数χの閉曲面(向きづけられるか否かは不問)上の地図は,辺で境される国を別の色で塗るという条件下において,ヒーウッドの数

  H(χ)=[{7+√(49−24χ)}/2]

色あれば塗り分けられるというものです(十分条件).([・]は切り捨て).

 実際の彩色数に対して

  N(S)=4,N(P)=6,N(T)=7,N(K)=6

ヒーウッド数は

  H(S)=4,H(P)=6,H(T)=7,H(K)=7

なので,クラインの壷では一致しません.しかし,クラインの壷以外のすべての向き付け可能・不可能な曲面に対して,彩色数はヒーウッドの公式で与えられます.たとえば,

  χ(3P)=−1    → H(3P)=7

  χ(2T/4P)=−2 → H(2T/4P)=8

  χ(5P)=−3    → H(5P)=9

  χ(3T/6P)=−4 → H(3T/6P)=9

  χ(7P)=−5    → H(7P)=10

[注1]この公式は本来χ<0の場合にのみ有効である.ただし結果的にχ=1(射影平面)とχ=0で向きづけられる曲面(輪環面)では必要十分な正しい値(それぞれ6と7)を与える.χ=2(球面)のときには4を与えるが,これは「偶然の一致」であって四色問題の解ではない(∵上の公式を導くときχ<0という条件を本質的に使っている).

[注2]これは十分条件であって,必要条件(どうしてもそれだけの色がいる)ではない.結果的にはχ=0で向きづけられない曲面(クラインの壷)以外の曲面ではすべて正しく必要十分な色数を与えている.クラインの壷は唯一の例外で公式の値は7だが,実は6色で必要十分である.必要性は部分的(χの特別な値の例)には19世紀末から知られていたが,最終的にはヤングスとリンゲルとが共同研究して1968年に完全に証明された.

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