■フェルマーの最終定理と楕円曲線(その18)

【4】整数点の分布と佐藤sin^2予想

 解の個数Npについては,

  p+1−2√p<Np<p+1+2√p

を満たすことが証明されています(ハッセの定理,1933年).ハッセの不等式は,有限体上の曲線に対するリーマン予想とも呼ばれるものです.解の個数の平均はNp=p+1通り,また,誤差項Mpはpに比べて小さく,|Mp|≦2√pで,Npは各素数pごとにてんでんばらばらになっておらず,そこにはある秩序が存在しているというわけです.

 また,佐藤予想とは楕円曲線Cの位数の分布に関するもので,Cが虚数乗法をもたないとき,

  cosθp=(Np−p−1)/2√p=Mp/2√p

の偏角θpが,任意に固定された0≦a≦b≦πに対して,[a,b]となる素数密度:

  #{p≦x;a<θp<b}/π(x) 〜 2/π∫(a,b)sin^2θdθ

すなわち,その角分布はsin^2θに比例するであろうというものです.

 佐藤予想には,多くの言い換えがあって,

(1)x^2+Mpx+p=0

の解を

  √p(cosθ±isinθ)

とするとき,その角分布はsin^2θに比例する

(2)Mp/2√pが√(1−x^2)に比例する

(3)ハミルトンの4元数環(フルヴィッツの整数):(a+bi+cj+dk)/2の半径pの格子点3次元球面:a^2+b^2+c^2+d^2=4pの一様分布の実軸方向への射影である

といっても同じことです.

 佐藤予想はリーマン予想に匹敵する予想であるといわれていました.ところが,驚いたことに2006年になってハーバード大学のリチャード・テイラーによって佐藤予想の楕円曲線版(佐藤・テイト予想と呼ばれる)が証明されました.佐藤・テイト予想は定理になったというわけですが,佐藤予想そのものの証明ではないにせよ,100年に一度の大発展といえるのです.

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