■素数の並び方に規則性はあるのか?(その6)

【4】余白

 

 ヒルベルトは,リーマンのゼータ関数ζ(s)の零点がランダム・エルミート行列の固有値のように分布していると推測しました.後になって,これと同種の行列はその固有値が核子のエネルギーレベルに対応している原子核物理学の研究によく出てくることがわかりました.このエネルギーレベルの差として得られる分布が「ウィグナー分布」と呼ばれるものです.

 

 1925年,ハイゼンベルグが行列力学を,シュレディンガーが波動力学を提唱しました.ハイゼンベルグとボルンが行列力学を発見したとき,同じ固有値をもつ微分方程式を探すべきだと,ヒルベルトは彼らに語ったと伝えられています.しかし,彼らはそれに従いませんでした.そのために波動方程式を発見し損なったのですが,結局,その栄誉はシュレジンガーに与えられることになったのです.

 

 ハイゼンベルグは電子が粒子であることを前提とし,行列方程式を導きました.一方,シュレディンガーは電子の波動的性質から波動方程式を導きました.行列力学と波動力学は,別々に独立に存在し,それぞれが前提としていたことが大幅に異なっていたのですが,形式こそ違え,物理的には等値で,「量子力学」という1つの理論を表現していることが証明されました.

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