■フェルマーの最終定理と楕円曲線(その6)

e)さらに、フライとリベットによってフェルマー問題は楕円曲線の問題に還元できることがわかりました。すなわち、楕円曲線はフェルマー問題の定性的な一般化であり、フェルマー予想に反例が存在したときに生ずる楕円曲線は特異な性質をもつことになり、そのような曲線は絶対に正しいと信じられている谷山・志村予想の反例になりますから存在し得ないように思われたのです。フライとリベットがフェルマー(フェルマー曲線)と谷山(楕円曲線)を結んだことになりますが、それが証明されればフェルマーの定理は正しくなくてはならないということになります。フライはこの課題に取り組んだのですが、成功しませんでした。

f)英国生まれの数学者ワイルズは、フェルマーの定理の証明が一筋縄ではいかないことを実感して一時棚上げにしていたのですが、この結果にフェルマー攻略への道を確信し、研究室に7年間もこもって、彼独自のアイデアをもってとうとう証明に成功しました(1994年)。ワイルズはフライとリベットの結果に感服するとともに苦節7年、この結果より出発してこの手段を用いて成功するであろうということをあたかも雷光に打たれたかのごとく直感して、フェルマーの定理の解法を得たのです。

 19世紀の数学者クンマーはxp −1=0 (p:素数)の複素数解を有理数につけ加えて、整数の概念を複素数まで拡張した円分体の整数という概念を導入することによって、フェルマーの予想を攻撃しそれに肉薄したのですが、ワイルズは楕円曲線を等分する点のつくる代数幾何学によってフェルマー予想を完全解決したことになります。

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