■円錐面の輪切り(その10)

放物線や双曲線、楕円は円錐面を平面で切断したときに現れる曲線であり、これらの曲線の研究は古代ギリシャからなされてきた(アポロニウスの「円錐曲線論」)

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2変数x,yの多項式f(x,y)=0で定義される曲線を平面代数曲線と呼びます。f(x,y)=0が2次式の場合、その一般式は、

ax2 +hxy+by2 +cx+dy+e=0

のごとく、項数6の多項式として書くことができます。2次曲線には楕円、放物線、双曲線があり、それらは円錐(必ずしも直円錐でなくてよい)を平面で切断したときの切り口として現れる一群の曲線、すなわち円錐曲線です。

 ある緯度の位置に立てられた棒の影の先端が描く曲線は、その緯度によって楕円、放物線、双曲線のいずれかを描きます。また、天体力学では互いに引力を及ぼしあっている二つの物体は楕円、放物線、双曲線のうちのいずれかの軌道になります。例えば、地球から打ち上げた人工衛星の初速が秒速7.9km(第1宇宙速度)のとき円、それ以上で秒速11.2km(第2宇宙速度)以下のとき地球を焦点とする楕円、秒速11.2kmのとき放物線、それより速いときは双曲線を描くといった具合です。放物線軌道、双曲線軌道になると地球の重力圏を脱出し、もう地球に戻ってくることはありません。このように、円錐曲線は天文学において重要な役割を果たすことになり、力学と幾何学の間には美しい調和が存在していることになります。

 一直線上にない3点を通る2次曲線、3点を通る3次曲線はただひとつ存在しますが、それは座標軸の方向が定まっている場合であって、一般には、平面上の任意の位置にある5点が唯一の円錐曲線を決定します。ニュートンは「プリンキピア」のなかで5点を通る円錐曲線の作図法などを案出しながら壮大な天体力学を展開しています(→【補】)。

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【補】パスカルの定理

 パスカルの定理とは、「円錐曲線、すなわち楕円、双曲線、放物線に内接する任意の六角形の三組の対辺の交点は同一直線上にある。」というもので、この定理の重要な系が「円錐曲線は任意の5点で一意に定まる」です。

 パスカルはこの有名な定理をわずか17才の時に発見したのですが、これは射影幾何学の基本定理の一つになっています。射影幾何学とは、長さや角の大きさに無関係に、例えば、いくつかの点がある直線上にあるといった関係、射影によって不変な図形の性質、を研究する学問で、射影平面上では、円錐曲線はただ1種類しかなく、双曲線・放物線・楕円などの区別はなく、どれも同種の曲線となります。

 また、射影平面上では点という語と直線という語を入れ替えても定理は成り立っています。これをポンスレーの双対原理と呼び、射影幾何学の最も美しい特質です。パスカルの定理から150年以上たって、その双対(円錐曲線の外接する6辺形の対角線は1点で交わる)が発見されたのですが、それがブリアンションの定理です。

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