■ヤング図形とフック長公式(その16)

【5】ジャック対称多項式

 

 シューア多項式は一般線形群の表現の指標として自然に現れるが,有理数係数のなす対称空間の基底となるもうひとつの例として,ジャック多項式がある.

 

 それは結合定数βがパラメータβとしてはいった形で,たとえば,3変数の場合,

  J(3)(x)=m(3)(x)+3β/(2+β)m(21)(x)+6β^2/(1+β)(2+β)m(1^3)(x)

  J(21)(x)=m(21)(x)+6β/(1+2β)m(1^3)(x)

  J(1^3)(x)=m(1^3)(x)

と求まる.

 

 パラメータβを1(自由電子の場合)とするとシューア多項式sλ,β=0とすると単項対称多項式mλ,β→∞とすると基本対称式eλの定数倍になることが見て取れるだろう.

 

 相互作用をもつ系の場合,一般に相関関数の計算を厳密に行うことはとても困難で近似計算するしかないが,その点,ポテンシャルに三角関数解を仮定したカロジェロ-サザーランド模型(量子可積分系)は解析的な結果を期待することができる価値のある模型である.

 

 ジャック対称多項式も,直交多項式

  〈Jλ,Jμ〉=δ

であり,また,カロジェロ-サザーランド模型では

  Δ(x,β)=Π(1−xi/xj)^β

が基底状態

  Jλ(x,β)Δ(x,β)

が励起状態を表していて,量子可積分系の理論に自然に現れるものである.ジャック多項式はまたビラソロ代数という無限次元リー代数の表現論においても現れることが知られている.

 

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