■ペリトロコイド曲線(その29)

半径R=3rの円の円周上を半径rの円が滑らずに転がるとき,円上の固定点Pの最初の位置を(R,0)にとると,θだけ回転したときの点Pの座標は

  x=2rcosθ+rcos2θ

  y=2rsinθ−rsin2θ

で与えられます.この軌跡がデルトイドで,デルトイドは3つの尖点をもつ図形です.

 デルトイドは19世紀の幾何学者シュタイナーがシムソン線の包絡線として研究した図形で,シムソン線というのは三角形の外接円上の任意の1点から3辺に下ろした垂線の足を結ぶ直線のことです.

 コラム「コペルニクスの定理(ある有名な幾何の定理)」に掲げた「2円定理」により,半径2rの円が半径R=3rの円の内側を転がるとき,円上の固定された直径の描く包絡線はデルトイドになるわけですが,デルトイドの場合,この直径の両端も同じデルトイド上にあります.

===================================

【1】デルトイドの幾何学

 これにより「デルトイドの接線が曲線に挟まれる部分の長さは一定である」という性質が生じます.これはデルトイドでは長さ4rの棒をデルトイドに接しながら1回転することができるというのと同一です.

 そして,この事実により掛谷はデルトイドが「掛谷の問題」の解であると予想したのです.「掛谷の問題」については後述したいと思います.

 なお,n個の尖点をもつハイポサイクロイド

  x=(n−1)rcosθ+rcos(n−1)θ

  y=(n−1)rsinθ−rsin(n−1)θ

の面積は,定円の半径をR(=nr)とした場合,ハイポサイクロイドの面積は

  S=(n−1)(n−2)/n^2・πR^2

で表されます.

 デルトイドの場合はn=3,R=3rですから

  S=2πr^2

となって回転円の面積の2倍に等しくなります.また,n→∞のとき

  S→πR^2

となって定円の面積に近づきます.

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 冒頭に述べたことより,デルトイドでは半径2rの円上の定点の軌跡としても与えられますし,また,円周上を反時計回りと時計回りに動く2点P,Qがあり,点Pは点Qの2倍の速さで動くとき,直線PQの包絡線もデルトイドになります.

 デルトイドについて,これまで同じ曲線を描くために異なる定義があるのをみてきましたが,他のハイポサイクロイド,エピサイクロイドについてもみてみましょう.すると

(1)半径3rの円が半径R=4rの円の内側を転がるとき,円上の固定された正三角形の頂点の描く軌跡はアステロイドになる.

(2)半径3rの円が半径R=2rの円の外側を転がるとき,円上の固定された正三角形の頂点の描く軌跡はネフロイドになる.

===================================