■有限群の位数と超幾何関数

 楕円曲線は可換群の構造をもっていますが,

  C:y^2=x^3+ax+b=f(x)

の有限体Fpにおける群の位数は,ルジャンドル記号を用いて

  (f(x)/p)+1

のFp={0,1,・・・,p−1}をわたる和となります.あとの+1は加法の単位元となる無限遠点です.

 

 ルジャンドル記号は(mod p)では平方根の逆数の如く振る舞います.これをシンボリックに

  (f(x)/p)=1/√f(x)

と記すことにします.すると

  #C(Fp)=p+1+Σ1/√f(x)

となります.

 

 ところで,楕円関数の周期は

  ∫1/√f(x)dx

で表現できるのですが,このことから,有限群の位数は楕円関数の周期=楕円積分に相当していることが理解されます.

 

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 超幾何関数は楕円積分を一般化したものですが,有限体Fpにおける楕円曲線

  y^2=x^3+ax+b   (ワイエルシュトラスの標準形)

で定まる可換群の位数は,ガウスの超幾何関数を用いて,

  p=4n+1のとき,z^n2F1(1/12,5/12,1,1-z)

  p=4n−1のとき,z^n2F1(7/12,11/12,1,1-z)

      z=−4b^2/27a^3

と求められます.

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 また,非特異3次曲線は,射影変換を用いれば,

  y^2=x(x−1)(x−λ)   (ルジャンドルの標準形)

に変換されます.この場合の可換群の位数は,

  2F1(1/2,1/2,1,z),z=λ

すなわち,完全楕円積分

  2/πK(√z),z=λ

で与えられます.

  2F1(1/2,1/2,1,x^2)=2/πK(x)

  2F1(1/2,1/2,1,-x^2)=2/(π√(1+x^2))K(x/√(1+x^2))

(この関数は2次元ランダムウォークの再帰確率の母関数としても登場します.)

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 オイラー族:

  y^2=x^3+ax^2+bx

の位数は

  2F1(1/4,3/4,1,x),x=−4b/a^2

です.ここで,

  2F1(1/4,3/4,1,x^2)=2/(π√(1+x))K(k),k^2={1-√(1-x^2)}/2

  2F1(1/4,3/4,1,-x^2)=2√(1-2k^2)/πK(k),k^2=1/2{1-1/√(1+x^2)}

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 また,

  y^2=x^3+ax^2+b

の位数に対応するのが,

  2F1(1/6,5/6,1,x)

です.

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 ここでは,上部パラメータα,βの分母が2,4,6,12の有理数となる場合を掲げましたが,

  2F1(1/2,1/2,1,x),2F1(1/4,3/4,1,x),2F1(1/6,5/6,1,x),

  2F1(1/6,1/3,1,x),2F1(1/6,1/2,1,x),2F1(1/4,1/2,1,x),

  2F1(1/3,1/2,1,x),2F1(1/6,1/2,1,x),2F1(1/4,1/2,1,x),

  2F1(1/8,5/8,1,1-x),2F1(3/8,7/8,1,1-x),2F1(1/8,5/8,1,1-x),

  2F1(1/12,5/12,1,1-x),2F1(7/12,11/12,1,1-x),・・・・・

など,分母が2,3,4,6,8,12の有理数となる楕円曲線の族が知られています.

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 最後に,誤解のないように申し添えておきますが,有限体では上部パラメータ<1となる超幾何関数2F1(α,β,1,x)は常に有限のFp係数多項式(=代数的)になります.なお,代数的といっても,この場合,絵に描くことはできませんが・・・.

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