■五次方程式が根の公式を使って解けないこと(その41)

【3】ニュートンの恒等式の代数方程式への応用

 前節で述べた定理はニュートンに拠るとされるものであるが,このことから逆に,n次方程式:

  f(x)=x^n+a1x^(n-1)+・・・+an=Π(x−αi)=0

が与えられたとき,累乗和

  p1=α1+・・・+αn

  p2=α1^2+α2^2+・・・+αn^2

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  pn=α1^n+α2^n+・・・+αn^n

を根とする方程式の係数を導出することができる.したがって,もし係数a1,・・・,anがすべて有理数(整数)なら,求める方程式の係数もまたみな有理数(整数)となる.

 対称式による4次までの代数方程式の解法はラグランジュに負うものである.ラグランジュの方法は巧妙だが,彼は同様の方法を5次方程式に試みて失敗した.アーベルは5次以上の一般代数方程式がベキ根によっては解けない(5次以上の方程式には,係数の間の四則と累乗根を使って表す根の公式はない)ことを初めて証明したノルウェーの数学者である.

 現代では解の置換群であるガロア群から「5次以上の代数方程式は代数的に解けない」ことが自然に証明される.ラグランジュの方法はガロア理論の先駆をなすものであるが,アーベルは「ニュートンの定理」を援用して方程式論を形成したことになるといえる.これらについてはコラム「代数方程式と群」を参照されたい.

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