■三角形の心(その60)

[A2]この場合は元の三角形が正三角形であるが,またはλ=1(中点)のときに限ります.もっとも直接初等幾何学的に考えた方が早いかもしれません.

 それに対して[A1]は多彩である.

[A1]ΔLMNの面積/ΔABCの面積=(λ−1)^2/(λ^2+λ+1)

   λ=2なら1/7,λ=3なら4/13

 相似条件式はa≦c≦bまたはb≦c≦aとして

  a^2+λb^2−(λ+1)c^2=0

になる.もちろんa=b=cはこれを満足するが,それ以外にも多数の解がある.そしてそれが必要十分条件であり,実際に縮小三角形がもとの三角形と裏返しに相似になる.

===================================

(Q1)三角形LMNが三角形ABCと裏返しに相似になっている直角三角形の例を求めよ.

(A1)縮小三角形の相似条件式は

  a^2+λb^2−(λ+1)c^2=0

である.もちろんa=b=cはこれを満足するが,それ以外にも多数の解がある.等号を満たすためには

  a≦c≦bまたはb≦c≦a

であることが必要条件になる,

   a^2+c^2=b^2とすると(1+λ)a^2−c^2=0

   λ=2のとき,c=√3a,b=2a   (3辺の比が1:√3:2)

   b^2+c^2=a^2とすると(1+λ)b^2−λc^2=0

   λ=2のとき,c=√(3/2)b,a=√(5/2)b   (3辺の比が√2:√3:√5)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(Q2)a,b,cがすべて整数の例を求めよ.

(A2)不定方程式

  a^2+λb^2−(λ+1)c^2=0

において,λ=2のとき,a=1,b=11,c=9がひとつの解であるが,これでは三角形にならない! a^2+2b^2=3c^2の整数解を代数幾何的(類体論的?)に求めて,二辺の和は他の一辺よりも長いかどうかを確かめる方が近道と思われる.

  (a,b,c)=(5,13,11),(5,23,19),(19,61,51),(19,71,59),(23,37,33),(25,47,41),(29,59,51),(43,97,83),(47,83,73),(53,73,67),(23,13,17),(25,11,17),(29,11,19),(47,23,33),(47,83,73),(53,37,43),(95,59,73),(95,73,81)

などが見つかるが,鋭角三角形になる例に限るとλ=2,a,b,c≦100の場合だけでも,

  (a,b,c)=(23,37,33),(25,47,41),(47,83,73),(53,37,43),(53,73,67),(73,47,57),(95,73,81)

の7組が抽出される.

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(Q3)三角形をなす整数(a,b,c)は無限にあることを証明せよ.

(A3)まず,

  C: x^2+λy^2=λ+1

の有理数解を求める.楕円上の点(1,1)はその解のひとつであるから,C\(1,1)∩Q^2とQとは1:1に対応する.

 点(1,1)を通る傾きμの直線:

  y=μ(x−1)+1

と楕円との交点Pは,

  x^2+λ(μx−μ+1)^2=λ+1

  (1+λμ^2)x^2−2λμ(μ−1)x+λ(μ−1)^2−λ−1=0

  (x−1)((1+λμ^2)x−λ(μ−1)^2+λ+1)=0

より,

  P((λμ^2−2λμ−1)/(1+λμ^2),(−λμ^2−2μ+1)/(1+λμ^2))

 よって,μ=m/nとおき分母を払うと,

  a^2+λb^2−(λ+1)c^2=0

の整数解

  (a,b,c)=(λm^2−2λmn−n^2,−λm^2−2mn+n^2,m^2+λn^2)

を得る.たとえば,λ=2のとき,

  (a,b,c)=(2m^2−4mn−n^2,−2m^2−2mn+n^2,m^2+2n^2)

===================================